BRIEFING.320(2013.12.05)

賃借店舗買い取りで収益改善?

建物を賃借して営業している店舗は多い。むしろ自社所有の建物で営業している方が少ないかもしれない。建物を自社で所有していては、維持管理費や固定資産税等の負担があるし、借入金で取得していればその金利の負担が大変である。たとえ自己資金で取得していたとしても、その出資者に対する配当が求められる。

また、撤退や規模の拡大・縮小をする場合にも、早期撤退のペナルティー(敷金没収等)が過大でない限り、身軽に他へ移ることができ、賃貸の方が便利である

確かに毎月の賃料負担は重荷である。が、収益悪化が続く場合には、賃貸人と協議の上、賃料の減額改定をしてもらう途もあろう。自社所有という融通の利かない重荷よりは気楽である。

しかし、賃借している店舗を買い取ることによって賃料負担をなくし、収益改善に結びつけようのもひとつの考え方である。但しコストの安い資金調達が可能という条件が必要である。

ある百貨店は、ある不動産会社と店舗を共有(40:60)し、百貨店が、不動産会社の持分を賃借する形で店舗全部を使用している。そして百貨店は、不動産会社の持分を買い取り、100%自社所有とし、賃料負担をなくして収益改善につなげると言う。

まだ決定ではないらしいが、検討を重ね、それぞれが自社にとって有利と慎重に判断した結果であろう。

不動産を賃借して使うか所有して使うかは、判断の難しいところである。

もし、借りる方が常に有利となれば、皆、不動産を売って借りる方に回るであろうから、賃料水準は上昇し価格水準は下落する。そうすると今度は所有する方が得となるであろう。結局のところ、どちらもほぼ同等になるように、賃料と価格が決定されると言ってよい。

他方、物価の趨勢、すなわち今後、インフレになるかデフレになるかによって、その選択は左右される。

デフレの場合、賃借は所有に比べ、うんと有利になる。賃料は(減額)改定することができるからである。しかし一旦買った不動産の価格について(減額)改定はありえない。

反対に、インフレの場合は、所有が有利である。価格の(増額)改定はないが、賃料の(増額)改定は十分ありうるからである。

前述の百貨店は、インフレを予想し、不動産会社は、デフレを予想したとも考えられる。


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