BRIEFING.342(2014.08.18)

建築費上昇に見合う期待賃料上昇率(2)

前回の想定で土地の収益価格は52.2 万円/uと求められた。

今回は建築費を1割、2割、3割とアップさせた場合を試算してみる。計算過程は省くが、結果は次の通りである。

  建 築 費 賃料上昇率
 
還元利回り
 
収益価格
億円 万円/u 万円/u
6.0 20 0.5% 4.5% 52.2
6.6 22 同上 同上 45.0
7.2 24 同上 同上 37.7
7.8 26 同上 同上 30.4

建築費1割アップで土地の収益価格は▲14%、2割アップで▲28%、3割アップで▲42%の下落となる。

次に土地の収益価格が、建築費6億円の場合と同じになるよう、賃料の変動率を調整してみる。

  建 築 費 賃料上昇率
 
還元利回り
 
収益価格
億円 万円/u 万円/u
6.0 20 0.50% 4.50% 52.2
6.6 22 0.82% 4.18% 同上
7.2 24 1.12% 3.88% 同上
7.8 26 1.40% 3.60% 同上

建築費の値上がりに伴い、同等の収益価格を得る将来の賃料上昇率、並びに還元利回りは上表の通りだ。これから40年間、毎年このような上昇が期待できるだろうか。

さて、昨今の建築費高騰はご承知の通りである。一方、賃料水準は回復基調に転じたばかりで空室率の改善もわずかなものである。

それなのに商業地の地価は下落どころか上昇へと大きく舵を切ったと見える。その原因は、これまで見てきたように、将来の賃料上昇に対する楽観的期待、強気の見込みである。

そしてそれは、「期待賃料上昇率」とも言うべきもので、市場参加者の主観で形成される大変にもろいものであると認識しておくべきである。


BRIEFING目次へ戻る