BRIEFING.346(2014.09.25)

「囲繞地」に続き「瑕疵」も削除?

道路がなく、周囲を他人地に囲まれた自分の土地へ歩いて行くには、他人地のどこかを通行させてもらわなければならない。もし周囲の土地の所有者がそれを拒めば、その土地は全く利用価値がなくなってしまい、社会的にも大きな損失となる。

これを救済するため「囲繞地通行権」が認められている。

ところで「囲繞地」は民法上の用語であったが、平成16年の民法改正で削除され「その土地を囲んでいる他の土地」と言い換えられている。

しかし「囲繞地」には、単に「囲んでいる他の土地」のみならず、それら全てが他人の所有権や地上権に係る土地で、道路でもない、といった意味を含んでおり、削除するにはあまりに惜しい言葉であった。賛同いただける業界人は多いだろう。

「囲繞地通行権」は「袋地通行権」と言い換えればよいとの反論もある。確かにこれらはどちらも「袋地へ行くために囲繞地を通行する権利」であり、言い換えは可能だ。しかし「囲繞地」と「袋地」は対立する言葉で、言い換えることはできない。

それはさておくとして、現在議論されている民法改正では「瑕疵」も削除されると言う。「瑕疵のある」は「契約の趣旨に適合しない」と言い換えられる見込みである。

一般国民には分かり易くなるかも知れないが、これらの用語に慣れ親しんだ業界人には寂しい限りである。せっかく(少なくとも業界において)馴染んだ言葉を法から葬ってしまう必要があるのだろうか。

分かりにくいからと削除してしまうより、機会を捉えて国民に説明し、理解を深めてゆく方が、より日本語が豊かになるのではないだろうか。民法に触れるきっかけとなるかも知れない。

また、本当にこの言い換えが分かり易いかどうかも疑問である。

多くの契約書や約款にも使われていることは想像に難くない。それが民法から削除されたからと言ってこれらの意味するところが変わるわけではないが、解釈が曖昧になりはしないだろうか。

一方、これまであまり説明のなかった「敷金」「原状回復」について、その意義が民法に明記される見込みである。分かりにくければ説明すればよいのである。


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