BRIEFING.35(2002.8.16)

自動増額特約のある場合の最終合意時点(2)

バブル期に見られた自動増額特約付きの賃貸借契約において、期間経過後の継続賃料の多くは、自動増額期間経過後、著しく過大となっていることだろう。平成2年から10年間は2年毎に4%ずつ(計4回)賃料を増額するという特約があった場合、次のような想定をし、最後の増額時における純賃料及びその利回りをみてみる。但し一時金はないものとし、支払賃料=実質賃料とする。

  賃 料

千円/月
自動
増額率
必要
諸経費
千円/月
純賃料

千円/月
基礎価格

千円/月
基礎価格
変動率
純賃料
利回り
H2  1,000   400   600 12,000  △20.7   5.0
H4  1,040 4.0   400   640  9,500  △15.8   6.7
H6  1,082 4.0   400   682  8,000  △12.5   8.5
H8  1,125 4.0   400   725  7,000   △7.1  10.4
H10  1,170 4.0   400   770  6,500   △4.6  11.8

さて、この例によれば平成12年の改定に当たり、従前の純賃料及び純賃料利回りは、と言えば平成10年の770千円/月、11.8%と言わざるを得ない。これが最終合意時点の純賃料及び純賃料利回りだとすれば、これらから試算されるスライド法による賃料及び利回り法による賃料は過大と言えるのではないか。

このような特約は、契約の両当事者が、契約締結時点の公租公課、賃料相場、及びその他の経済情勢等を背景として協議し、また将来を予測して行った約束である。その後は、原則として協議なく増額が行われているであろう。とすれば各自動増額時点は「合意時点」とは言えまい。協議なくして合意とは言えない。そこで最終合意時点とは、その時点の公租公課、賃料相場及びその他の経済情勢を背景として行われた協議により新たな合意があった最後の時点と解釈すべきと考える。


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