BRIEFING.368(2015.05.18)

価格の土地建物割合、賃料の土地建物割合

多くの不動産は土地と建物がセットになっており、土地の上に建物が物理的に付着しているため容易にこれを分離することはできない。

不動産鑑定評価の世界では、そのセットの状態を「建物及びその敷地」と言う。そのまんまであるが、一応専門用語と考えられる。

「建物及びその敷地」の価格は、両者一体となって経済価値を発揮するため、その土地建物の内訳を判断することは困難である。理論的で誰もが納得する統一的な分割方法はない。

現実の取引市場においても、土地建物一体で交渉されており、それをあえて分割するのは主として、消費税、法人税(減価償却)等、税務への対応の必要性からと考えられる。

賃料も同じである。建物賃貸借の賃料であっても、土地建物両方の価値から生ずるものと考えられるところ、その内訳はやはり判らない。この点、消費税では、建物賃貸借の賃料はすべて建物の賃料(土地の賃料ではない)として課税(住宅の貸付は非課税)されることとなっている。また減価償却とも無縁であるため、税務上、賃料については原則として土地建物に分ける必要はない。

ところで、ある不動産について売買と賃貸借を考えた場合、価格の土地建物割合と賃料のそれとは異なるであろうか。大まかには、建物の残存耐用年数の違いによって次表ように(建物:土地)変動してゆくものと感じられるがどうだろうか。

残存耐用年数 50年 30年 10年 1年
  価 格 10:10 6:10 2:10 0:10
  賃 料 10:10 8:10 6:10 3:10

価格の場合、建物部分が残存耐用年数に準じて減少すると考えられる。賃料の場合も、傾向としては同じだが、その減少の程度は緩やかと考えられる。その理由は次の様に考えることができる。

●賃料は、その時点(一定期間)の価値に依存する。
●価格は、その時点(一定期間)の価値に加え、その存続期間にも依存する。

理論的な説明は難しいが、賃料は一本の棒の長さで表され、価格は何本も並ぶ棒(徐々に短くなってゆくが)の面積で表されるもの、と言うことができよう。

賃料については、土地建物に分ける必要性に乏しいことから、これまでほとんど議論されることはなかった。また、価格についても、不動産鑑定評価で言う積算価格(土地建物の価格内訳が出る)の土地建物内訳で按分するといった方法(割合法)や、どちらかを鑑定評価額から控除する方法(控除法)が提案されてはいるもののこれといった決定的な方法がなく、税務上は便宜的に認められている方法で事足りるため、それ以上議論されることもなく行き詰まっているのが現実である。


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