BRIEFING.37(2002.10.17)

貸家及びその敷地の収益価格と既払い権利金

貸家及びその敷地の売買に当たって、買主(新所有者)は賃貸人たる地位をも承継する。これに伴い敷金・保証金等の預り金的一時金の返還債務も承継する。従って、その預り金的一時金が売主から買主へ、売買代金とは別途清算されない限り、これを代金の一部と相殺する必要が生じる。

では、権利金・礼金・敷引き等の返還する必要のない一時金についてはどうか。

これは売主(旧所有者)がすでに収益として収受してしまったものであるから、それを(またはその一部を)買主(新所有者)に引渡す必要はない。

したがって、権利金を受取った旧所有者が、すぐに新所有者に当該不動産を売却した場合にでも、新所有者は権利金を得ることのないまま賃貸人の地位を承継しなければならないこととなる。旧所有者は権利金のもらい逃げである。

そこで、それによる新所有者の損失(収益の減少)は収益価格に反映させる必要があり、具体的には権利金の運用益・償却額を収益に計上してはならないこととなる。

しかし、満室の賃貸マンションで、各戸の契約始期が様々である場合はどうだろうか。確かに新所有者がすぐに新たな権利金を得る機会はない。だが順次解約が生じてくればまた新たな契約をしてゆくこととなり、相当の権利金を収受してゆくこととなろう。

新築なら最初に全戸について権利金を収受した後、当分権利金を得る機会が訪れないであろうが、逆に満室で契約始期が様々なら、最初からアットランダムに権利金を得る機会が訪れる。この場合は権利金の運用益・償却額を計上すべきだろう。


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