BRIEFING.378(2015.11.05)

2つの事件に見る手続きの形骸化

スピード違反等で反則キップを切られたドライバーがその違反を認めない場合、兵庫県警には一定の手続きを踏む内規があるという。新聞報道によると、このような場合、担当した警官は、他の警官を現場に呼んで当時の現場見取り図を書かせ、写真を撮らせ、検察に送る捜査報告書に署名してもらうのだという。

裁判での確実な証拠とするためだろう。

しかし実際にわざわざ他の警官を現場に呼んで・・・というのはいかにも面倒くさい。来てくれた警官にも手間を取らす。

違反はこの目で確認したのだから間違いない、書類さえ整っておれば・・・と考えるのも分からないではない。先頃、兵庫県警の警官多数がこの内規に反し、自分で作成した現場見取り図に後から同僚の署名をもらっていた事実が発覚した。

県警は計70人を虚偽有印公文書作成・同行使等の容疑で書類送検、他にも関与した78人を戒告等の処分にした。手続きが形骸化していたと言わねばならない。

基礎杭のデータ流用も事情は同じだろう。

支持地盤に届いたかどうかは「機械の操作の感触で分かる」という。従ってデータは取らなくても分かる。但し書類を整える上では必要。ならば流用でも構わないか・・・。次々とデータの流用が発見されるところを見ると、このような考え方が蔓延していたと考えられる。

流用した理由はいろいろと想像できるが大別すると次の2つだろう。

@届いていないかも知れないが、工期もきついし、届いたように偽装しよう。
A届いたという自信はあったがデータが取れなかったのでデータを偽装しよう。

@は問題外だ。技術者としてのプライドがなく資質に欠ける。その罪は重い。

Aは、甘いかも知れないが同情の余地がある。兵庫県警の事件にも共通する。現場ではちゃんとやってるんだから後は書類さえ整っておれば・・・、どうせ上は書類しか見ないんだから・・・といった感覚だ。

次々と発覚したデータ流用も、Aならまだ救われる。

だがAであったとしても、現に支持地盤に杭が届いていないマンションがあったという事実は重い。売主、施工業者(元請け)、下請け、さらに末端の職人もが責任を痛感し、業界の信頼回復に努めなければならない。


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