BRIEFING.38(2002.11.18)

バブルの発端と収益性の重視

昭和60年頃から東京都心部の商業地域に端を発した地価高騰は、商業地域から住宅地域へ、東京圏から大阪圏・名古屋圏へと波及した。その波及の過程において金融機関の過剰な不動産への融資が大きな役割を果たしたというのがバブルについての定説である。また、収益価格を軽視し比準価格を重視してきた不動産鑑定業界の責任も重いとされている。

しかしバブルの芽は収益性の過大評価にあったのではないか。

比準価格は実際の取引価格の水準が上昇してはじめて上昇する。取引価格の水準の上昇を越える上昇はあり得ないのである。しかし現実には採用する取引事例が過去の時点のものとならざるを得ず、時点修正という予測に係る作業が介在することとなる。この予測を誤れば、比準価格が実際の取引価格を先導する結果になる。

一方収益価格は比準価格以上に将来の予想に依存する部分が多く、賃料水準に対する予測により大きく上下に変動する。たとえば、東京が世界の金融センターになりオフィスが不足し、地方のレジャー施設も不足するという予測、これらは収益価格を大きく押し上げるであろう。

そしてこのような予測は、四全総、内需拡大、リゾート法、ウオーターフロント開発といった(今となっては懐かしい)キーワードとともに昭和60年以降、当然のこととして金融界、不動産業界等に受け入れられたのである。

バブルの発端は取引事例の重視からではなく、むしろ収益性の過大評価にあったとは言えまいか。

比準価格には過去から現在にかけての短期的な予測(価格について)が、収益価格には現在から将来にかけての中長期的な予測(賃料等について)が介在する。予測のブレは収益価格の方が大きい。

単純に比準価格が善で収益価格が悪とするのは早計である。むしろ不動産を取得しようとするすべての人がその収益性を考慮して取引するとすれば、比準価格は収益価格の収束の結果とも考えられるのである。


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