BRIEFING.393(2016.04.28)

どこでもOK「保育所」

都市計画法には都市計画区域において定めるべき12種類の用途地域(第8条第1項第1号)が用意されており、そのそれぞれを定める目的(第9条)について規定している。

第1種低層住居専用地域なら「低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」、工業専用地域なら「工業の利便を増進するため定める地域」といった具合である。

そしてそれを受け、建築基準法第48条ではそれぞれの地域において建築可能な建築物の用途を、同法別表第二に委ねて規定している。

たとえば、住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿は工業専用地域以外ならどこででも建てられる。キャバレー、ダンスホール等は商業地域と準工業地域のみでOKだ。病院は第1種及び第2種低層住居専用地域、並びに工業地域と工業専用地域で建てられない。

様々な用途の建物のうち、すべての地域において建築可能なものもある。

巡査派出所、一定規模以下の郵便局等、神社、寺院、教会等、公衆浴場、診療所、保育所等である。

閑静な住宅街でも、繁華街でも、殺伐とした工場のある所でもOKという訳である。それぞれが持つ機能に鑑みればなるほどと思える。

一方、近年保育所建設に対する住民の反対運動についてよく耳にする。どこにでも建てられるはずなのに・・・。その結果、建設を断念した例も珍しくないという。反対の理由は主に次の点である。

●子供の声がうるさい。
●送迎の親の車が危険。

せっかく静かな所に引っ越してきたのに、近所に保育所建設?・・確かに気持ちは分からなくもない。工場から大型ダンプが出入りする地域で子供がうろうろしたら運転手さんには困った問題である。繁華街に保育所、というのもいかがなものか。

しかし、保育所側にとっては、本来建てられるはずなのに建てられないというのはあまりにも理不尽である。そのために用地を取得しているであろう。また、半ば地域への奉仕という姿勢で取り組んでいたかも知れぬ。

社会的にも待機児童の解消が大きな課題となる中、悩ましい問題である。行政の積極的な取り組み、そして、保育所側と住民側の真摯な話し合いが望まれる。


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