BRIEFING.397(2016.06.07)

土地取引件数の増減と地価

株式市場では、特定の株式の出来高が急増する場面がある。それは、その株価が上昇または下降トレンドにはいったことを示唆すると言われている。ただ、上昇か下降かの見極めは難しく、実際にどちらの方向に動き出したかを確かめなければ分からない。

したがって、取引量の増加のみからでは、どちらへ動き出したのかは判断し難い。

土地についてはどうだろうか。

一般に、取引が活発だと地価は上昇していると考えがちだ。しかし、それは投げ売りが増えているからかも知れない。また、不活発なら地価は下落していると思いがちだが、上昇期待の売り渋りによる取引減少かも知れない。

国土交通省は、毎月の土地の取引件数を市町村毎に公表しており、比較的最近の件数を知ることができる。登記の移転を元に把握していることから、商業地も山林も一緒の扱いで広狭も区別していない点は残念だが、何か地価との関連が読み取れるのではないか。近年の東京都心の地価と土地取引件数について見てみることにする。

前述の公表値から、都心3区(千代田・中央・港)の取引件数を拾出し分析してみると次の通りである。

 期 間 3区合計件数 対前期比 対前年同期比
H26.01〜03   4,831  38.4%  20.7%
H26.04〜06   4,137 -14.4%  -1.5%
H26.07〜09   3,748  -9.4%   9.9%
H26.10〜12   4,236  13.0%  21.4%
H27.01〜03   3,759 -11.3% -22.2%
H27.04〜06   3,508  -6.7% -15.2%
H27.07〜09   4,300  22.6%  14.7%
H27.10〜12   3,610 -16.0% -14.8%
H28.01〜03   4,908  36.0%  30.6%

この間、地価公示価格の対前年変動率(全用途平均)は次の通りである。

価格時点 千代田区 中央区 港 区
H26.01.01  4.5%  5.4%  4.8%
H27.01.01  5.8%  7.1%  5.7%
H28.01.01  7.7%  9.6%  7.2%

残念ながら明確な相関関係は読み取れない。重要なのは取引件数ではなく、契約成立に至る過程であろう。買うということは他方で売るということ。その取引後、どちらがお礼を言ったかを調査したデータはないものか。


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