BRIEFING.410(2016.10.17)

「特定有害物質」の追加と施行期日

土壌汚染対策法は「土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護すること」を目的としている。

「特定有害物質」とは「鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるもの」である。

これを受け、同法施行令第1条には、25物質が列挙されており、本年3月には新たに「クロロエチレン」を追加する旨、閣議決定されたところである。施行期日は平成29年4月1日である。

さて、法は以下の通り、いくつかの場面で「特定有害物質による汚染の状況」を土地の所有者等(所有者、管理者又は占有者)に対し、一定の調査をし知事に報告することを義務づけている。

@有害物質使用特定施設の使用の廃止時(第3条)
A一定規模以上の土地の形質変更の届出の際に土壌汚染のおそれありと知事が認める時(第4条)
B土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると知事が認める時(第5条)

これらに基づき、知事は要措置区域(第6条)や形質変更時要届出区域(第11条)の指定を行うこととなる。なお、これらの他、自主調査において汚染を発見した土地所有者等からの区域指定申請(第14条)に基づき、指定する場合もある。

では、改正政令の施行日まではクロロエチレンを調査対象外としてよいのだろうか。

これについて、環境省水・大気環境局長は、知事・政令市長宛通達を発している。

それによると「調査の義務が発生した時点で調査対象とするか否かを判断する」とし「以降に法に基づく手続に新たに着手する場合」は調査対象とするとしている。また「施行時点ですでに法に基づく調査に着手している場合」には「調査のやり直しを求めないこととする」としている。

「法令不遡及の原則」に則った運用である。しかし、クロロエチレンによる汚染が明らかである場合にも施行前だからと言って調査対象外とするのはいかがなものか。“駆込み調査”を招きかねない。

そこで同通達は、B(第5条)の規定があることを指摘した上で「・・・ができることとなっていることにも留意して、適切にリスク管理をすることが重要である。」と含みを持たせている。


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