BRIEFING.418(2017.01.19)
緑化によるメリット
昨年12月、国土交通省都市局公園緑地・景観課は「緑による建物の魅力アップガイド」を作成・公表したところである。「都市緑化の一層の推進のため、屋上や壁面の緑化によって、建物の魅力を高め、ビジネスに活かすことに成功した事例や携わった人達の生の声、そこから導き出される成功のポイントを紹介すること」を目的にしている。
その中では、実際に緑化を行った建物オーナー等からの聞き取りをもとに、緑化によるメリットが「7つのワケ」として以下の通りまとめられている。
@土地や建物の短期的・長期的な資産価値の向上
A新たな商空間の創出
B企業や組織の社会的評価の向上
C労働環境や学習環境の改善
D施設の差別化・特別化
E環境対応と建物保護
Fコミュニケーションのきっかけ
緑化は、社会や地域のためではなく、自らの利益にもつながるという主張がくみ取れる。「資産価値の向上」「建物保護」等、直接経済価値に結びつくものの他、「社会的価値の向上」等、間接的にそれに結びつくものもある。
それが投資額や維持管理費に見合うものか否かは分からないが、決して社会貢献に留まるものではないことが分かる。今後は、その経済価値を貨幣額をもって表示することも必要だろう。
ところで、都市緑地法には「緑地施設整備計画」認定制度(第60条)が設けられている。一定の地域内における民間の同計画について市町村長が認定をする制度である。
認定を受けた代表的な建物等としては、東京の六本木ヒルズ、品川グランドコモンズ、大阪のなんばパークス等がある。これらを含め全国9都市に28件が認定を受けている。
しかし平成23年1月の認定を最後に近年は認定がない。それもそのはず、平成23年6月まであった税制面での優遇措置が廃止されているのである。しかし、以降、認定に値する緑化がなくなったと言うわけではなく、認定のメリットがなくなったからその申請をしていないだけで、冒頭の「7つのワケ」を期待した緑化は多く行われていると思われる。
国土交通省は平成13年から、期間・日時を限定して同省の入居する霞ヶ関合同庁舎3号館の屋上庭園を公開している。同館は昭和41年新築(昭和48年増築)のSRC11階(地下2階)建の古い建物であるが、積載荷重を考慮し防水層に配慮し、うまく屋上が緑化されている。その効用は様々なデータからも裏付けられている。
ただ、そこから見下ろす皇居の深い緑と見比べると、あまりにも貧弱だ。地面に深く根を下ろす木々とは比較にならない。しかしながら、屋上で暑さ寒さに耐え、強風や乾燥に晒されつつも建物オーナーにメリットをもたらす。健気な木々を応援したい。