BRIEFING.423(2017.03.09)

「居住調整区域」による逆線引き(1)

神奈川県茅ヶ崎市の茅ヶ崎ゴルフ倶楽部は、珍しく市街化区域に存するゴルフ場である。一般にゴルフ場は市街化調整区域にあり、土地に課される固定資産税が安い上、都市計画税は課されない。茅ヶ崎ゴルフ倶楽部の場合は借地上にあるから、直接これらの税を負担する訳ではないものの、その地代は市街化区域の固定資産税・都市計画税を前提に決定され、相当に高額であるという。

そこで同倶楽部は、市に対して市街化調整区域への「逆線引き」を求めてきたが、市は平成25年12月、不可能との結論を出している。同倶楽部はこの重税が重荷になって閉鎖に追い込まれ、ゴルフ場自体もなくなろうとしている。

市街化調整区域から市街化区域への編入は、珍しいことではないものの、その逆、いわゆる「逆線引き」は確かにあまり聞かない。通常は、その地域の土地所有者の理解が得られないからであろう。

ところで、昨年改正された都市再生特別措置法に基づき、全国の市町村は「立地適正化計画」の策定・公表を迫られているところである。その計画には、市街化区域内の一部に「居住誘導区域」を定めることが求められている。

その範囲はあくまでも「一部」であり、市街化区域全域を「居住誘導区域」にすることは「設定するべきではありません」(国土交通省「立地適正化計画の作成に係るQ&A」)とされている。なら99%ならいいのか、などと屁理屈を言わず、将来推計人口を直視してみろ、というのが同省の立場だ。

「居住誘導区域」とは「都市の居住者の居住を誘導すべき区域」(都市再生特別措置法81条2項2号)である。そうすると、これに含まれない地域は、市街化区域であっても「誘導すべきでない区域」ということになる。

市街化区域は「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」(都市計画法7条2項)であるはずなのだが・・・。

都市再生特別措置法は「居住誘導区域外の区域」について、一定の開発行為を事前届出制(都市再生特別措置法88条1項)とし、それに対する勧告制も用意(同法同条3項)し、居住を緩やかにコントロール(抑制と言ってよいだろう)していこうとしている。

「居住誘導区域外の区域」の設定はいわば緩やかな「逆線引き」と言うことができる。

次回は、まさに「逆線引き」と言ってもよい「居住調整区域」について述べる。


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