BRIEFING.424(2017.03.16)

「居住調整区域」による逆線引き(2)

都市再生特別措置法による「立地適正化計画」では、市街化区域内の一部に「居住誘導区域」が設けられ、「居住誘導区域外の区域」には、一定の開発行為について届出制と勧告制が適用されることとなる。いわば緩い「逆線引き」である。

さらに同計画において、任意ではあるが、市街化区域内に「居住調整区域」を定めることもできる(同法89条)。ここでは「特定開発行為」について「市街化調整区域とみなして」(同法90条)許可制が布かれることになる。ここまで来るとほとんど「逆線引き」と言わざるを得ない。

以上を開発規制の緩い順に整理すると下表の通りとなる。

市街化区域 居住誘導区域(全部はだめ)
居住誘導区域外の区域
居住調整区域(任意)
市街化調整区域  

本年2月20現在「立地適正化計画」を作成・公表済みの市町村は6つある。これらの中に「居住調整区域」を定めた計画はいくつあるだろうか。内、2つの計画に目を通した限り、それを定めてはいない。「逆線引き」は地域の理解が得られないからだろう。

「居住誘導区域」から漏れることでさえ「逆線引き」に近いと考えられる。したがって、ある市の計画では、市街化区域のほとんどが「居住誘導区域」に定められ、漏れた地域は「土砂災害警戒区域」等のもともと居住にふさわしくない区域のみであるように見受けられる。市街化区域であるのに「居住誘導区域」から漏れたり、「居住調整区域」に定められたりすれば、地価の下落に直結するおそれがあり、市町村も慎重にならざるを得ないのだろう。

「土砂災害警戒区域」の指定も、地価の下落を招くとして、躊躇しがちであるが、これについては、もともとその地域にあった潜在的危険性、いわば隠れた瑕疵が明らかにされたものであるから、土地所有者にとっても、受忍せざるを得ないと考えられる。

しかし「居住誘導区域」からの漏れや「居住調整区域」の設定は、土地所有者には容認し難い。人口減少社会にあってコンパクト・シティー化は共通認識ではあるが、特定の誰かの犠牲によって成すべきことではないし、紙一重で損得が分かれる様ではまずい。

そこで次回は「逆線引き型土地区画整理」を提案する。


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