BRIEFING.446(2017.10.05)

分割併合で見えてくる限定価格の本質(2)

前回、限定価格を求めるに当たって重要なのは「対象不動産の正常価格」ではなく「4つの正常価格」であることを指摘した。その4つとは次の通りである。

1.併合前A地の正常価格(以下、a とする)
2.併合後A地の正常価格(以下、a’とする)
3.分割前B地の正常価格(以下、b とする)
4.分割後B地の正常価格(以下、b’とする)

そして(a’−a)と(b−b’)との差が配分すべき増分価値である。そしてその何%かが(b−b’)に加算されて限定価格が求められるのである。対象不動産(10u)の正常価格は出る幕がなく、不動産鑑定評価基準が、それを併記しなければならないとしていることは失当であると言わねばならない。

但し、分割併合でなく、一括併合であった場合に限っては、対象不動産の正常価格がすなわちbであり、b’=0であるから(b−b’)が対象不動産の正常価格に等しいため、そのような場合に限っては妥当と言うべきである。

以下@Aは前回と同じ表である。今回はこれにB(一括併合)を加えた。なお、BのA地において、奥行が長くなる効果(減価)と二方路地となる効果(増価)が相殺され、単価に変化はないものとした。

@取引前
間口×奥行 地積 単価 総額
A地 10m×10m 100u 40万円/u 4,000万円
B地 10m×20m 200u 15万円/u 3,000万円
300u 23万円/u 7,000万円
 
A分割併合後
間口×奥行 地積 単価 総額
A地 10m×11m 110u 40万円/u 4,400万円
B地 10m×19m 190u 15万円/u 2,850万円
300u 24万円/u 7,250万円
 
B一括併合後
間口×奥行 地積 単価 総額
A地 10m×30m 300u 40万円/u 12,000万円
B地 10m× 0m  0u 15万円/u   0万円
300u 40万円/u 12,000万円

分割併合の場合と、一括併合の場合とで、それぞれa、a’、b、b’が上表@〜Bのどの数値に該当するかは説明するまでもない。そして前述の通り(a’−a)と(b−b’)との差が配分すべき増分価値であり、一括併合の場合には、(b−b’)が対象不動産の正常価格になることが分かる。

次回は、分割による減分が、併合による増分を上回るケース、つまり増分価値がマイナスになる場合について検討する。


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