BRIEFING.46(2003.2.13)

賃借人の交代頻度による賃貸人の損得

投資用マンションとしては、回転の速いワンルームがよいとされている。賃借人の交代頻度が高いと、賃貸人にとって次の利点があるからである。

@返還のいらない一時金である権利金、礼金等を収受する機会が増える。
A新規賃料と継続賃料との間に生ずる賃料差額を小さくすることができる。

このうちAは、新規賃料と継続賃料の逆転も見られる今日、利点とは言えない。

また、@についても、交代に伴う次のような負担が、権利金等を上回れば、交代頻度が高いことは賃貸人にとって不利なこととなる。

ア.従前賃借人の通常の使用に伴う損耗の回復に要する費用
イ.新規賃借人募集に伴う広告料、仲介手数料、審査費用等

「通常の使用に伴う損耗」は、賃借人に回復義務はなく、賃貸人が行うこととなる。

半年間の入居であっても、クロスにシミが、床に家具の跡が残る。そしてそれが自分の使用に伴うものなら何ら気にならない程度の損耗でも、他人(前賃借人)の使用に伴うものなら気になるものである。したがって、わずかな損耗でも新規賃貸借に当たっては、その回復が必要となってくる。

借り手市場になってきためイ.も増加傾向にある。

一方、権利金等は、競争の結果、減少の傾向にある。その結果、交代費用がこれらを上回り、賃借人の交代頻度は低いほど有利と考えられる。

権利金等は、「賃料の前払い」としての性格を有するとされてきた。しかし今日では「賃借人交代費用の一部充当」と言うべきではなかろうか。


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