BRIEFING.476(2018.07.19)

「高さ指定道路」の指定と居住環境

道路法の車両制限令は第3条1項3号で、通行できる車両の高さの最高限度を定めている。それによると最高限度は3.8mであるが、平成16年の改正で、原則3.8mを維持しつつ「道路管理者が道路の構造の保全及び交通に危険の防止上支障がないと認めて指定した道路」については4.1mに緩和されている。この道路を「高さ指定道路」という。

車両制限令は、車両の一般的制限値として、幅2.5m、長さ12.0m、高さ3.8m等を定め、これを超える車両を特殊車両とし、許可がなければ道路の通行を許していない。しかし「高さ指定道路」においては、高さ4.1mまで許可なく通行することができるのである。

「高さ指定道路」は高さの上限を厳しくした道路ではなく、原則的な高さの制限を一定限度まで緩和した道路である。

ところで、ISO(国際標準化機構)規格の国際海上コンテナには、その長さによって20ftコンテナと40ftコンテナ等があり、その幅はいずれも8ft(2.438m)であるが、高さは前者の場合8ft6in(2.591m)、後者の場合は8ft6inと9ft6in(2.896m)とがある。

高さ9ft6inのものは「背高コンテナ」「ハイキューブ・コンテナ」と呼ばれ、容量が大きく物流の効率化に寄与している。なお業界では「背高」を「せいたか」と読む。

この9ft6in(2.896m)をトレーラー(車台高さ1.2m程度)に積むと、路面からの高さが3.8mを超えて特殊車両扱いとなり、道路の通行に許可を要することとなる。しかし「高さ指定道路」なら4.1mまで許可不要であるため、それが増えることは運送業界にとっては大変に嬉しいことなのである。

そこで全日本トラック協会では、毎年度、新規「高さ指定道路」要望を取りまとめ、具体的に道路名とその区間等を示して警察庁や国土交通省に提出している。勿論、その全部が受け容れられるものではなく、指定される道路もあれば「指定不可」とされる道路も多い。「指定不可」の理由としては次の様なものがある。

●道路管理者として指定の必要がないと判断したため
●通学路であり、住宅地でもあることから、交通安全上の観点で指定しない。
●狭小幅員のため大型車の交通の危険防止の観点で指定しない。
●歩道も無いため交通安全上の観点で指定しない。
●私有地のため

指定による居住環境の悪化が危惧されていることが読み取れる。工業地域では歓迎されても、住宅地域では嫌悪されるだろう。居住環境の維持と物流の効率化との調整が望まれる。

一般に、道路幅員は広い方がよい。4mよりは6mの方がよい。そしてそれがその地域の地価水準に影響することが知られている。しかし住宅地において10mや20mの幅員は不要だ。車両の通行が増えて返って居住環境が悪化するおそれがあるからである。

車両の高さの制限も、鉄道のガード下等で低すぎては困るが3.8mあれば(3.8m未満に制限する場合は高さ制限標識が設置される)十分で、「高さ指定道路」として4.1mまで許せば居住環境の悪化を招き、延いては地価水準にも影響しかねないだろう。

地域に対する細かな配慮は必要だ。かと言って指定が細切れでは意味がない。悩ましい問題である。


BRIEFING目次へ戻る