BRIEFING.48(2003.2.27)

物価連動型住宅ローンと賃料増減額請求権のない定期借家

不動産を「取得」する場合のリスクはデフレであり、「賃借」する場合のリスクはインフレである。今朝報道された「物価連動型住宅ローン」(財務省と住宅金融公庫で検討中)は、「取得」でありながらそのリスクを回避または緩和する住宅取得の方法と言える。 

本来、将来の物価変動についての利益を享受・不利益を甘受するのが「取得」であるはずである。ところがこの方法の場合、デフレになればその不利益の一部を公庫が負担してあげましょうということになる。反面、インフレの場合には享受すべき利益を少しよこしなさいということになる。公庫にとって、将来肩代わりする不利益と利益が均衡するように設計されるならば妥当な制度と言えよう。 

一方、将来の物価変動についての利益を放棄・不利益を回避(賃料の遅効性により全部ではない)するのが「賃借」である。将来の賃料は増減額によってある程度調整されることが予定されているからである。

短期の定期建物賃貸借なら、期間満了後の再契約又は転居に際し、支払う賃料は新規賃料となるであろうから、物価変動についての利益は完全に放棄、不利益は完全に回避されると考えられる。

しかし定期建物賃貸借でも長期でかつ、賃料増減額請求権を双方放棄するという契約方法もある。長い契約期間中、インフレになっても賃料は上げませんが、デフレになっても下げませんよというものである。これは本来の「賃借」の持つ特徴に反し、利益享受・不利益甘受型となるであろう。

これらのインフレ・デフレ時の利益・不利益は次の通り整理される。

  デフレ時 インフレ時
取得
 
原則 不利益甘受 利益享受
物価連動型住宅ローン 不利益回避 利益放棄
賃借
 
原則、及び短期の定期 利益享受 不利益甘受
長期の定期で賃料増減額請求権放棄 利益放棄 不利益回避

不動産の利用の仕方のメニューが増えたと言う意味では歓迎すべきだろう。


BRIEFING目次へ戻る