BRIEFING.481(2018.09.27)

固定資産税の「据置ゾーン」温存で残る不公平(1)

固定資産税は、毎年1月1日現在の土地・家屋等の所有者に対し課税される地方税である。その税率は1.4%であり、毎年の課税標準額にこれを乗じて税額が計算される。

宅地の課税標準額は、3年に一度見直される評価額に、一定の軽減措置等を加えて算出されたもので、住宅用地については地方税法第349条の3の2の軽減措置(1/3(200uまでは1/6))、商業地等及び住宅用地については地方税法附則第18条の負担調整措置等がある。この負担調整措置は、税負担の激変を緩和しつつ、負担水準の不均衡是正を目指したものである。

負担水準とは「前年度の課税標準額÷今年度の評価額」であり次表の通り求められる。なお、住宅用地の場合の課税標準額には前述の軽減措置も加えたものとなる。

前々年度 前年度 今年度 来年度
評価額 A1 A2 A3 A4
負担水準 B1÷A2 B2÷A3 B3÷A4
負担調整措置
課税標準額 B1 B2 B3 B4

負担調整措置は負担水準の区分に従い次表の通りとなる。商業地等と住宅用地とでルールが異なっている。なお、商業地等のウの場合、上限は評価額の60%、住宅地のイの場合は100%である。

<商業地等>
  負担水準   課税標準額
70%以上 今年度の評価額の70%に引下げ
60%以上70%未満 前年度と同額に据置き(据置ゾーン)
20%以上60%未満 今年度の評価額の5%を前年度課税標準額に上乗せ
20%未満 今年度の評価額の20%に引上げ
 
<住宅用地>
  負担水準    課税標準額
100%以上 今年度の評価額の100%とする
20%以上100%未満 今年度の評価額の5%を前年度課税標準額に上乗せ
20%未満 今年度の評価額の20%に引上げ  

こうして見てみると、住宅用地の負担水準は100%に収束するであろうが、商業地等については単一の水準に収束せず、60〜70%の間(「据置ゾーン」と呼ばれる)に収束することが分かる。確かに一定の均衡化は進むものの、このゾーン内では不公平が固定化されるおそれがある。

地方財政審議会は平成29年11月「平成30年度地方税制改正等に関する地方財政審議会意見」を公表している。同意見は「税負担の均衡化は着実に進んできた。」とする一方「据置特例は、据置ゾーンの中において負担水準の高低により、評価額と税額の高低が逆転するといった不公平な状態を固定化する側面を有している。このため、税負担の均衡化を一層推進する観点から、地価動向等を踏まえつつ、商業地等に係る据置特例について見直しを進める必要がある。」と述べている。

この「意見」はH30年度の税制改正に反映されることはなかったが、その結果、どのような不都合、不合理が生ずるのか、次回検討する。


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