BRIEFING.487(2018.12.07)

長期解約不可の建物賃貸借とファイナンスリース

建物の賃借人は、通常、契約期間中であっても、定められた予告期間以前に通告することにより、これを解約することが可能である。しかし、借地借家法第38条の定期建物賃貸借の場合、賃借人からの解約が一定期間不可という特約も有効(但し200u未満の住宅でやむを得ぬ事情の場合は解約可能)とされる。

賃貸人が、賃借人の要望に合わせて建物を建てて一棟貸しする場合等には、建物への投資を確実に回収するため、賃貸人はこの特約により、建物の耐用年数に近い期間、賃借人からの解約を不可とする契約が多く見られる。

一方、「リース取引に関する会計基準の適用指針」には「ファイナンス・リース取引に該当するリース取引」の2要件を定めている。1つは「解約不能のリース取引」、もう1つは「フルペイアウトのリース取引」で、その両方を求めている。それは動産・不動産を問わない。とすると、前述のような建物賃貸借はこれに該当するおそれがあり、賃借人は建物について資産計上が必要となる場合もある。

同「指針」は、「具体的な判定基準」として次の2要件のいずれかを求めている。(2)に該当することは希だろうが、(1)には該当しがちで、それが判定の鍵となろう。

(1)現在価値基準:期間中のリース料の現在価値の総和が物件価額の概ね90%以上。
(2)経済的耐用年数基準:期間が物件の経済的耐用年数の概ね75%以上。

ここで留意すべきは、建物賃貸借は、建物を貸すと同時にその敷地である土地も貸しているところ、土地(無限の経済的耐用年数を有する)はオペレーティングリースと推定され、建物についてのみで判定するということである。つまり、(1)(2)の基準による判定は、建物のみ(土地は含まない)の賃料・価格でなされることになる。

しかし、価格はともかく、賃料を土地建物に分けることは可能であろうか。考えられる方法としては、土地建物の価格割合での按分だろう。

さて、以下は1億円の土地に1億円の建物を建て、月額賃料100万円で25年間解約不可で一棟貸しする場合について、(1)の基準に該当するかを判定したものである。

 
価格 割合      賃  料
土地 1億円 50%  600万円/年  50万円/月
建物 1億円 50%  600万円/年  50万円/月
合計 2億円 100% 1,200万円/年 100万円/月
 

25年間(300ヶ月間)解約不可とし、割引率を年4.5%(月0.375%)とすると年金現価率は、月額賃料に対して179.91で、賃料の現在価値の総和およびその建物価格に対する割合は以下の通り求められる。

50万円/月 × 年金現価率179.91 ≒ 現在価値の総和8,996万円

現在価値の総和8,996万円 ÷ 建物価格1億円 ≒ 89.96% < 90.00%

このあたりがファイナンスリースか否かの分岐点になりそうだ。


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