BRIEFING.496(2019.03.05)

割当てられた駐車場と分譲マンションの評価

通常、分譲マンションには駐車場が附置されており、管理組合がそれをマンションの区分所有者(管理組合員)に有料で賃貸している。駐車場の台数が不足して、空き待ち状態となることも多い。しかし近年、若者の車離れ、高齢者の免許返上の動きもあってか、交通利便性の高い地域においては、駐車場が余り、区分所有者以外の人に駐車場を貸す例も見られる。

一方、各戸に1台の駐車場が、管理規約によって無料で割当てられているマンションもある。トランクルームが無料というのもある。別途有料で借りるのに比べ断然有利で、一見、その価格は有料賃貸のマンションに比べて、高いとも思える。

ところで、駐車場が有料で賃貸されている場合、その賃料は管理組合の収益であり、駐車場を含む共用部分の日々の管理や将来の修繕に充てられる(@参照)。それが無料ということは、その分、管理費・修繕費が不足(A参照)するため、同等の維持管理水準を維持してゆくためには、月々徴収する管理費・修繕積立金を多く徴収せねばならないこと(B参照)になる。また、そうすべきだし、実際そうしている管理組合が多いのではなかろうか。

@有料賃貸(賃料は管理組合の収益となる)・・・・維持管理してゆける。
A無料割当でその分の管理費等の上乗せなし・・維持管理してゆけない。
B無料割当でその分の管理費等の上乗せあり・・維持管理してゆける。

つまり、無料割当ては、管理組合員にとって、特段有利にはならず、マンションの価格を高く評価すべき要因にはならないのである。

確かに車を所有している人にとって、必ず1台分使えるという点は安心だが、十分に台数があるなら有料賃貸でも同じである。

次に、無料割当のマンションを賃貸(駐車場も一緒に)することを考えてみる。そうすると、その場合には駐車場の分だけ高く貸せるであろうことが容易に想像できる。

そうすると、同一の不動産(マンション)について、無料割当駐車場があることで、価格は上がらないのに、賃料は上がるという一見、妙な結果になる。

それは、次の様に説明できる。

●価格が上がらないのは・・・
無料割当と言っても、所有者は管理費等の上乗せという形でその賃料相当額を管理組合に支払っており、実質的には有料賃貸と変わらない。もし上乗せがないとすれば、それによる利益(価格上昇)は、維持管理の劣化による価格下落で相殺されるはずである。

●賃料が上がるのは・・・
賃借人は、市場の専有部分賃料プラス市場の駐車場賃料で納得。賃貸人(=所有者)から見ると、自分が管理組合に上乗せ分も含まれた管理費等を払っているから、賃借人から徴収する駐車場賃料は、その立替え分を回収したにすぎないと言うことができる。


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