BRIEFING.499(2019.05.10)
容積率の相違が地価に及ぼす影響の程度(1)
敷地面積に対してどれくらいの床面積の建物が建てられるかは、その地域毎に都市計画で上限が定められており、これを指定容積率という。但しその敷地が接する道路幅員によっても制限がかかる。詳しいことは省略させていただくが、このコラムの読者諸兄に説明の必要はあるまい。
さて、容積率の格差は、土地の価格にどの程度影響を与えるであろうか。以下、200%、300%、400%の場合の収益価格を比較して検討する。それぞれ500uの土地に、容積を使い切って4階建、6階建、8階建の賃貸ビルを新築することを想定する。建築費は20万円/u(設計監理費含む)で、賃料は3,000円/月u(共益費込)とし、有効率は80%、収益は賃料のみ、経費率は30%(空室損失込)として純収益を求める。その内、建物に帰属する純収益を、建築費の元利均等償還額(45年、5%、元利均等償還率5.626%)とし、これを控除した残余を土地に帰属する純収益とする。これを5%の還元利回りで還元したものを収益価格とする。その試算結果は下表の通りだ。
容積率 |
階数 |
延床面積 | 建築費 | 賃料 | 収益価格 | 格差 |
|
u | 千円 | 千円/年 | 千円 | 円/u | |||
200% | 4 | 1,000 | 200,000 | 28,800 | 178,160 | 356,320 | 1.00 |
300% | 6 | 1,500 | 300,000 | 43,200 | 267,240 | 534,480 | 1.50 |
400% | 8 | 2,000 | 400,000 | 57,600 | 356,320 | 712,640 | 2.00 |
容積率の格差と収益価格の格差は一致する(上表右端参照)。そして賃料単価、建築費単価を変動させても、この関係に変わりはない。
では、この事務所ビルの1階を店舗とし、その賃料単価が他階の2倍であったとしたらどうだろうか。その結果は下表の通りで、容積率の格差ほどは収益価格が変化しない事が分かる。階数が高いほど1階の高賃料単価が薄まり、平均賃料単価を下げてしまうからである。
容積率 |
階数 |
延床面積 | 建築費 | 賃料 | 収益価格 | 格差 |
|
u | 千円 | 千円/年 | 千円 | 円/u | |||
200% | 4 | 1,000 | 200,000 | 36,000 | 278,960 | 557,9200 | 1.00 |
300% | 6 | 1,500 | 300,000 | 50,400 | 368,040 | 736,080 | 1.32 |
400% | 8 | 2,000 | 400,000 | 64,800 | 457,120 | 914,240 | 1.64 |
次に、この建物が賃貸マンションであり、2階の賃料は3,000円/月uのままとし、1階はその99%、3階は101%、4階は102%・・・8階は106%とする。その結果は下表の通りで、容積率の格差以上に収益価格が変化することが分かる。階数が高いほど平均賃料単価が上昇するからである。
容積率 |
階数 |
延床面積 | 建築費 | 賃料 | 収益価格 | 格差 |
|
u | 千円 | 千円/年 | 千円 | 円/u | |||
200% | 4 | 1,000 | 200,000 | 28,944 | 180,176 | 360,352 | 1.00 |
300% | 6 | 1,500 | 300,000 | 43,848 | 276,312 | 552,624 | 1.53 |
400% | 8 | 2,000 | 400,000 | 59,040 | 376,480 | 752,960 | 2.09 |
これらを「賃料単価均一モデル」「店舗付事務所モデル」「マンションモデル」と名付け、次回、それぞれについて、賃料水準を上げてみた場合、建築費単価を上げてみた場合について試算してみる。