BRIEFING.005(2001.10.01)

地籍調査の積極的推進 −「都市再生」の「具体的施策」より

総合規制改革会議(議長・宮内オリックス会長)が7月24日決定した基本方針のうち「都市再生」分野における「具体的施策」は4つの大項目から成っている。そしてそのうちの1つ「不動産市場の透明性の確保」は6つの小項目から成っている。そしてそのうちの1つが「地籍調査の積極的推進」である。

地籍調査とは、土地分類調査、水調査とともに国土調査法に基づいて行われる調査の1つであり、一筆毎の土地の所有者、地番、地目を調査するとともに、境界、面積について測量を行い、その結果を地図及び簿冊に取りまとめるものである。この調査が完了すれば土地取引の円滑化等に大きく寄与するものと思われる。

しかし実際には境界に争いがあるために、筆界の確定ができない等、なかなか進んでいないようである。この法律は、昭和26年に制定され、その後すぐに調査に着手されてはいるのだが、平成11年度末の進捗率は全国で43%、DID地区(人口集中地区)においては17%にすぎない。

地籍調査の推進は、今回の基本方針を待つまでもなく、土地白書においても毎年の如く唱えられてきた施策である。今回の基本方針ではこれを「実施率の低い都市部において、計画的集中的に」行うこととしている。しかし地価が高く権利関係の錯綜する都市部においては、境界争いの顕在化をもたらし、努力の割に進捗率の増えない仕事となろう。

そこで基本方針では「土地境界紛争に関する裁判外紛争処理制度など」を設けることにも言及している。この制度をうまく機能させるためには、境界についての専門家を組織し、育成してゆくことが重要になっていくものと思われる。

筆界は公法上のもので当事者の意向でこれを左右することはできない。一方、土地の所有権の限界について当事者が筆界と関係なく合意をすることは何ら差し支えないと考えられている。とすれば筆界を確定するのに当事者の意向はあまり関係がないということになる。

しかし筆界は、探せば見つかるというものではなく、結局当事者の合意した所有権の限界を重要な資料として確定せざるを得ない。したがって境界についての専門家は、事実上所有権の限界をも左右する権限を有することとなるのであるから、その社会的意義は大きく、境界についての鑑定手法と地域の慣習を熟知していることは勿論、利害関係者の主張に耳を傾け、その信頼を得ることのできる人物でなければならない。


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