BRIEFING.522(2020.04.16)

新型コロナと相続税路線価の「調整率」

先頃、国土交通省が公表した標準地の地価公示価格(1月1日現在)を概観してみると、全国・全用途平均で5年連続の上昇、しかも上昇基調は強まっている、ということが分かる。

ところが国土交通省がこれを公表したのは3月18日。新型コロナの影響で、医療機関から、そして各業界から悲鳴が聞こえ始め、不動産の取引もピタリと止まり、賃料(特に飲食店舗)の緊急減額要請も見られる状態となっていた頃である。

そのような時期に「上昇基調は強まって・・」とは誠に的外れではあるが、公示価格の価格時点が1月1日であることに思い至れば納得も出来よう。

ちなみに、国内での感染1例目の報告があったのは1月14日、武漢からの帰国者であった。この頃ですら、まだまだ中国だけの問題と認識されていたのである。

では、相続税路線価についてはどうであろうか。

相続税路線価は、毎年分がその年の7月に公表され、その年内において有効な価格であるが、基準日はその年の1月1日である。新型コロナの影響が拡大し、7月の地価が今以上に下落しているとすれば、そこに生ずる違和感は、地価公示価格公表の時以上となる。

そして、このことは、主に相続・贈与で取得した土地の評価額に、さらには、相続・贈与税額に直結するため、納税者にとって大きな問題である。

ところで、東日本大震災のあった2011(平成23)年には、東北地方等の10県について、その市区町村毎に、さらにはもっと細分化して「調整率」を定め、評価額を下げる措置が執られている。

相続については平成23年3月11日以降に申告期限(相続の発生を知った日の翌日から10ヶ月以内)が到来する人が、同年3月10日以前に取得した土地について、贈与については平成22年1月1日から平成23年12月31日までに取得した土地について、それぞれ適用される。

震災後のみならず、震災前に遡って減額されている。時価5,000万円の土地を相続した直後、震災でその価値が半減したにも拘わらず、課税の際の評価は5,000万円のままといった不合理を救済することができる。

その際の「調整率」は、例えば福島県双葉郡の宅地で0(評価しない)、同県いわき市の宅地で0.75(一部地域で0.60、0.30)、同県福島市の宅地で0.85(一部地域で0.70)、千葉市中央区の宅地で0.95と、いった具合である。

さて、新型コロナ・ウイルスの影響は、どう判断すべきだろうか。その影響は、ある日(例えば3.11)を境に激変したというものではない。「調整率」の程度のみならず、地域区分、時間的区分も考え合わせるとすると、調整のルールは大変複雑となる。

GW明けには終息し、「調整率」の心配も杞憂に終わることを祈る。


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