BRIEFING.548(2021.01.07)

固定資産税の賦課期日と価格時点

本年度の与党税制改正大綱には、新型コロナによる景気悪化を受け、土地固定資産税額の据置(下落の場合は下落)が謳われている。本来なら、今年は3年に一度の評価替えの年に当たり、多くの場合、土地の評価額上昇で増税となるところである。さてここで、固定資産評価の基準となる日「価格調査基準日(価格時点とも言う)」について、その原則をおさらいしておく。

固定資産税は賦課期日(毎年1月1日)現在の固定資産(土地・家屋・償却資産)所有者に課税される市町村税(東京23区では東京都税)である。税額は、その固定資産の評価額に一定の調整(住宅用地の特例による軽減他)がなされた課税標準額に、1.4%の税額を乗じて算出される。以下は土地の固定資産税について述べる。

さて、その評価額は毎年見直されているのかと思われがちだが、実は3年に1回しか見直し(これを評価替えと言う)がされない。そして今年(令和3年)はちょうどその年に当たっている。過去は、平成30年、27年、24年、21年・・・がその年に当たりこれらを「基準年度」と言い、それ以外の年は「据置年度」と言われる。「据置年度」においては評価替えがないから、原則として3年間同じ評価額が採用されることになる。

では、令和3年、4年、5年の3年間の評価額の価格時点が「基準年度」(令和3年)の1月1日かと言うとさにあらず、その1年前、令和2年1月1日なのである。当初から1年遅れの評価額を3年間使い回しすることになる。当然その間に地価が下落することもあろう。そうすると(税額は据置なので)納税者としては面白くない。評価事務に要する期間や費用を考慮すれば致し方ないとも考えられるし、(地価が)上昇しても(税金を)上げないのだから、(地価が)下落しても(税金を)下げません、というのも分かる話なのだが、心情的には合点がいかないところである。

そこで総務省は「下落修正」という手を用意し、上昇しても上げないけど、下落したら下げます、という対応をしている。同省の告示「固定資産評価基準」の第1章(土地)の第12節(経過措置)の二には以下の規定がある。

「令和3年度の宅地の評価においては、市町村長は、令和2年1月1日から令和2年7月1日までの間に標準宅地等の価額が下落したと認める場合には(中略)評価額に次に掲げる方法により修正を加えることができるものとする。」

つまり価格時点(令和3年1月1日)と賦課期日(毎年1月1日)との時点の乖離を、下落の場合に限って縮めようという計らいである。上記では、1年間の差を半年間に縮小するものであるが、この告示は毎年改正され、乖離が2年間になれば1年半に、3年間になれば2年半に縮小することになる。

どうせなら価格時点=賦課期日となるよう「下落修正」すればよさそうだが、評価事務の量を考慮すれば、半年間の差が残るのは容認せざるを得ないということであろう。精一杯なのだろうが中途半端である。

なお「下落修正」は、価格時点を賦課期日の半年前(前年の7月1日)に変更するというものではなく、あくまでも価格時点は「基準年度」の前年の1月1日であり、例外的に市町村がその判断で評価額を「修正」をしたという建付けとなっている。評価替えは3年に1度のみである。

大綱に盛り込まれた措置は、新型コロナ直前(令和2年1月1日)の地価が3年前に比べて大きく上昇しており、その後の半年間の「下落修正」を経てもなお大幅増税になることに対応したものである。


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