BRIEFING.557(2021.06.17)

借地権割合の実際

建物の敷地があたかも上下に分割されたかのような立面図を見かける。借地権のイメージ図である。その土地の価値が借地権の設定により、正にその画の如く借地権(上)と底地(貸宅地)(下)とに分割されたと考えることができる。ではその分割割合、即ち借地権割合はどれくらいなのだろうか。

実際の市場における借地権割合の把握は難しい。その理由として以下のことが挙げられる。

@そもそも借地権取引が少ない上、土地の所有権移転がないため事例の把握が困難。
A借地権価格の形成要因は権利金、名義変更料、賃料、期間、建物規模、堅固か非堅固か等、多岐にわたり、把握・分析が困難。
Bセットで取引される建物の状況の把握・分析が困難(この点は、自用地も同じ)。
C建物と借地権の取引価格が判明してもそれを両者に区分するのがABにより困難。
D借地権割合の分子(借地権価格)が把握困難な上、分母(更地価格)にも誤差がある。
Eそもそも標準となる「借地権割合」の「借地権」とはどういう条件のものか明確でない。

そこで国税庁は、これらの事情をぐっと飲み込んだ上で、財産評価基本通達に基づき各地の借地権割合をザックリと定めている。路線価図に示された路線価(千円/u)の後の記号A〜Gが借地権割合90〜30%に対応する。

A(90%)の多い地域の1つとして中央区銀座がある。路線価図で2〜4丁目当たりを見てみると、中央通りはA、そこから北西側の銀座ガス灯通り、銀座レンガ通り、並木通りもAである。南東側のあづま通り、銀座三原通り、昭和通りはB(80%)、さらに南東の築地あたりもBである。但しこれらと直行する銀座柳通り、銀座マロニエ通り、松屋通りは、中央大通りより2本南東の銀座三原通り付近までAとなっている。

京都市中京区・下京区で見てみると、東西に走る四条通りはB、その北の錦小路通り、蛸薬師通りはCである。南北の通りでは、烏丸、寺町、新京極、河原町、木屋町の各通りがB、高倉、堺町、柳馬場、富小路、麩屋町、御幸町の各通りはC(70%)である。鴨川の川床で有名な先斗町通りもCだ。

大阪市中央区を南北に貫く御堂筋、堺筋はB、これと並行及び直行する道路もほぼ全部Bである。しかし東へ行って阪神高速環状線(東横堀川)を越えるとCとなる。但し土佐堀通り、本町通り、中央大通りはそこから東へ行ってもBだ。

では、G(30%)の地域はどこにあるだろうか。比較的大都市に近いのにGである道路として、仙台市青葉区の八幡町通りがある。都心から西へ向かう道路で、大崎八幡宮前付近まではF(40%)、さらにその先、大崎八幡宮の駐車場へ向かう道路とのT字路から先がGだ。用途地域の指定が近隣商業から1種住居に変わり路線価が大きく下がる地点でもある。

この他のGとしては、東京都なら小笠原村の父島、母島(倍率地域)、大阪府なら千早赤阪村(倍率地域)の一部等がある。

現地のイメージと借地権割合とは整合するだろうか。概ね地価の高い地域、繁華性の高い地域ほど借地権割合も高いと言えるが、必ずしもそうとも言い切れないところが面倒くさい。

市場における実際の借地権割合は前述の@〜Eにより把握困難である。そのためその“相場”と呼べるようなものは見出しづらい。あえて言えば、国税庁の定めた借地権割合が市場を先導し“相場”として定着しつつあるということだろうか。


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