BRIEFING.560(2021.07.12)

ウッドショックが地価に及ぼす影響

米国、中国での住宅需要の高まりを受け、国内の輸入木材価格が高騰する「ウッドショック」が住宅産業に打撃を与えている。一方で国産材への需要増加期待もあるが、すぐにその供給を増やせる訳でもなく、高騰が一時的なもので終わってしまうおそれもあり、国内林業関係者も積極的には動き辛いところであろう。

さて、木材価格の値上がりが地価にどのような影響を及ぼすのか、ここでは、更地に対する収益還元法「土地残余法」を使ってその収益価格を試算してみる。「土地残余法」とは、最有効使用の建物を建築してこれを適正な賃貸条件で新規に賃貸することを想定し、これにより得られる純収益から建物に帰属する純収益を引いて、適正な還元利回りで還元して収益価格を求める手法である。地価公示標準地の収益価格は、この手法で求められている。

想定建物等の諸条件は次の通りとする。

敷地面積200u、建築面積100u、延床面積200u、木造2階建共同住宅4戸。

有効率90%、2階賃料2,500(1階はその−5%)円/月u、敷金3ヶ月分、運用利回り年2%、年間修繕費は建物初期投資額の0.4%、年間維持管理費は支払賃料の3%、年間損害保険料は建物初期投資額の0.1%、空室損失1/12、建物等の取壊費用の積立額は建物初期投資額の0.1%とする。

躯体:仕上:設備割合を4:4:2とし、その経済的耐用年数を30、18、15年とした。

建物の年間固都税は建物初期投資額の半分の1.7%、土地については求められた土地の収益価格に対して、70%の1/6の1.4%(固資)、70%の1/3の0.3%(都計)となるよう調整した。

建築費は22万円/uとし、これに設計監理費3%を乗せたものを建物初期投資額とする。

還元利回りは4.5%とした。

求められた収益価格は次表左欄の通りである。建築費は、22万円/uから、23万、24万と上昇させている。すると、その上昇率以上に地価(収益価格)が下落することが分かる。建築費が2万(+9.1%)上がれば半分以下にまで下落してしまった。なお、木材価格の上昇で設計監理料や修繕費まで一律に上がる訳ではないが、ここでは建設物価全体が上がると考えた。

右欄は賃料水準を2割上げて同様に試算してみたものである。こちらも同様の傾向だが、地価の下落幅は先ほどよりは緩やかだ。2万上がっても1/4ほどの下落で止まっていることが分かる。

建築費\賃料単価  2階2,500円/月u 2階3,000円/月u
22万円/u 60,000円/u 156,000円/u
23万円/u(+4.5%) 41,000円/u(−32%) 137,000円/u(−12%)
24万円/u(+9.1%) 22,000円/u(−63%) 118,000円/u(−24%)

建物賃料の基礎となるのは、建物価格と土地価格だ。その前者が上昇すれば、市場が受け入れられる水準まで後者が圧縮されるだろう。そして賃料水準の低い地域ほど建物価格の割合が高く「ウッドショック」による地価下落圧力も大きくなると考えられる。


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