BRIEFING.569(2022.02.18)

地盤調査だけではない「サウンディング」

建設、不動産業界で「サウンディング」と言えば、地盤の状態を調査する方法のことである。これから建物を建てようとする土地の地盤の状態、強度、地耐力を把握することは、建物基礎の構造を決定する上で重要である。

その方法としては、一定の重りを杭の上に落として一定の深さに貫入するまでの落下回数を計る「標準貫入試験」や、一定の形状のドリルの上に重りを乗せてそれを回し一定の深さに貫入するまでの回転数を計る「スウェーデン式サウンディング試験」(SWS試験)等がある。

前者の結果は「N値」で表示され、後者ではそれに準ずる「換算N値」を把握することができる。

いずれもボーリング調査とは異なり、土層のサンプルを取らない簡易な方法であり、特に「スウェーデン式サウンディング試験」は安価で行えるため、一戸建住宅の敷地においてよく用いられる方法である。

その開発国は、その名の通りスウェーデンであるのだが、日本産業標準調査会は2020年10月、その名称から「スウェーデン」を外し「スクリューウエイト貫入試験」に名称を改めている。その理由を同調査会は次のように説明している。

〇対応国際規格ではスウェーデンという国名が付けられていない。
〇我が国では試験装置及び試験方法が独自に発展し、対応国際規格とは異なるものとなっている。

だが略称は偶然にも「SWS試験」で変わらないという結果に落ち着いている。

そもそも「サウンディング」とは、「SOUNDING」であり「音を出す」という意味の他、「水深を測る」「水底調査」「探りを入れる」といった意味を持っている。延いては「地下の様子を探る」「地盤調査」という意味にも用いられるようになったのであろう。なお、「SANDING」は「砂で研磨する」ことであり関係はない。

ところで、2018年6月、国交省総合政策局は、「地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引き」を公表(2019年10月更新)した。この場合の「サウンディング」は「地盤調査」ではなく「探りを入れる」に近いものだろうか。

同手引きは、地方公共団体がコンサルタント等に委託せず、自ら行う形のものを対象としており、「サウンディング型市場調査」を次のように定義している。

「事業発案段階や事業化検討段階において、事業内容や事業スキーム等に関して、直接の対話により民間事業者の意見や新たな事業提案の把握等を行うことで、対象事業の検討を進展させるための情報収集を目的とした手法」

そしてこの手引きがその実施を想定している主な場面は「公的不動産の利活用」であるから、我々の馴染んだ「サウンディング」とは異なる意味の「サウンディング」が業界内に現れたことになる。

不動産の利活用について「まずサウンディングを行なって・・・」と聞いて「スクリューをぐるぐる回して地盤を調べるやつね」と早合点してはならない。民間事業者との意見交換等を通し、事業に対して様々なアイデアや意見を把握する調査か・・・と思わねばならない。ベテラン業界人ほど要注意だ。


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