BRIEFING.57(2003.6.16)

耐用年数満了後の減価償却費(2)

そもそも経済的残存耐用年数とは、どのように判断すべきものであろうか。実際に稼働している不動産について、設備の経済的耐用年数が満了しているとか、躯体のそれも満了している、といった判断が妥当なのであろうか。

実務上は、同種建物の新築時の一般的な経済的耐用年数を判断し、それから対象不動産の実際の経過年数を控除することにより査定することが多い。確かに築10年程度までなら、満了までの年数を見積もることは困難であろうから、このような方法(これを「引き算査定」と呼ぼう)もやむを得ないだろう。しかし、築15年とか、築45年といった年数を経過した建物の場合、微妙かつ重大な判断を迫られることとなる。

このような場合には、やはりあと何年使うことが合理的かという判断が先にあって、それに経過年数を加算し、合計で経済的耐用年数を求める(これを「足し算査定」と呼ぼう)ことが必要であろう。

そして、相当古くても現に本来の目的で使用されている建物については、少なくとも1年の残存耐用年数を認めた上で「足し算査定」により、減価償却費を計上すべきではないか。その翌年に再評価することとなった場合には、もし建物が同様の状態ならさらにもう1年の残存耐用年数を認めればよい。分母が1増えるが大差なく、結果の急騰・急落は避けられ、妥当な結果が導かれるものと考える。

建物は、随時修繕・更新される。15年経ったから給排水設備はありませんとか、築50年だから雨漏りは我慢して下さい、といったビルはない。60年経ったビルでも適正な修繕を行っているビルは通常の使用に耐えるであろう。それでも新築ビルに比べれば使用価値が劣るかも知れない。しかしそれは、収益還元法における総収益や、積算法における基礎価格に反映されるもので、減価償却費に期待すべきものではなかろう。

「償却済みだから」という考え方には「資産の費用化、期間配分、損金化の終了」といった会計上または税務上の認識との混同が推定される。新たにビルを取得する人は、簿価がいくら残っているかということに、興味はないはずである。


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