BRIEFING.571(2022.03.28)

今年の地価公示は「Withコロナ公示」

地価公示法に基づき、令和4年1月1日時点の標準地の正常価格が公示された。

それによると、全国・全用途平均は2年ぶりに上昇に転じた。用途別に見ると、住宅地、商業地ともに2年ぶりの上昇であった。三大都市圏を見てみると、全用途平均、住宅地は東京圏・大阪圏・名古屋圏の全てで2年ぶりの上昇、商業地については、東京圏、名古屋圏で2年ぶり上昇にしたものの大阪圏では横ばいに止まった。

ちなみに、工業地について見てみると、全国・全用途平均は6年連続の上昇であった。新型コロナウイルスの影響が大きかった昨年も、工業地は下落しなかったのである。物流倉庫需要の拡大が背景にあることは言うまでもない。

なお、公示価格は1月1日時点。オミクロン株による第6波が全国に広がったのはその後である。そして未だ終息していない。このことはまだ反映されていない。また、ロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始したのは2月24日。その後の原油をはじめとする資源価格の高騰、食料品の値上がり、金利の上昇見込みもまだ織り込まれてはいない。

一方で、新型コロナに対する恐怖感が薄れてきたという思いを禁じ得ない。満員電車でもショッピングセンターでも、居酒屋でも、皆だんだん平気になってきた。他方、マスク、手洗い、手指消毒は習慣となり、Eコマース、Web会議が普及し、テレワーク、在宅勤務も一時より減った感じはあるが定着してきた。恐る恐るも新型コロナとの共存の途を見い出しつつあるのだろう。

さて、全国の変動率上位を見てみよう。

住宅地の1位は北海道北広島市共栄町1丁目(+26.0%)。2位は同市美沢3丁目、3位は同市東共栄2丁目。ちなみに5〜7位も同市である。商業地の1位は同市栄町1丁目(+19.6%)、2位は同市中央2丁目だ。3位には福岡市の博多区祇園町が入る。北広島市は「札幌」駅と「新千歳空港」駅とを結ぶJR千歳線「北広島」駅を中心とする町で、プロ野球・日本ハムファイターズの本拠地となる新球場のオープン予定(2023年春)で活気づく。「札幌」から「北広島」までは快速「エアポート」で16〜17分。前述の標準地も新球場も「北広島」駅が最寄駅だ。さらに新球場直結の新駅開業(2028年見込)にも期待が集まる。これまで地価が低かったこともあって、今回の大幅地価上昇につながった。ここなら、自宅でテレワークを済ませてから球場へ足を運んでもプレイボールに間に合う、というライフスタイルも見えてくる。

次に変動率下位(下落率上位)を見てみる。

住宅地の1位は福島県いわき市平下平窪3丁目(-8.1%)、以下は、愛知県知多郡南知多町大字片名、北海道岩見沢市栗沢町最上、長野県長野市大字赤沼、同市豊野町豊野、広島県江田島市江田島町切串3丁目と続く。商業地の1位は大阪市中央区道頓堀1丁目(-15.5%)、2位は同区日本橋1丁目、3位は同区宗右衛門町、4位は同区心斎橋筋2丁目、5位は同区難波1丁目、6位は同区千日前2丁目である。いずれもいわゆる「ミナミ」の商業地で、インバウンドと新型コロナに振り回された地域である。一昨年は変動率上位を占め、昨年と今年は下位に並ぶ。

社会は新型コロナを受入れて対応し、人も企業も行動を変え、不動産市場の参加者もそれを前提に判断する。そして地価が形成される。今年の地価公示は「Withコロナ公示」としよう。


BRIEFING目次へ戻る