BRIEFING.579(2022.07.07)
収益価格を積算価格と等しくする利回り
不動産の利回り(R)は、不動産の価格(P)と収益(A)とを関連付ける割合である。これによって、@価格から収益を求めたり(P×R=A)、A収益から価格を求めたり(A÷R=P)することができる。
また、B価格と収益から利回りを求める(A÷P=R)こともできる。
上記@の場合、判明しているPと査定されたRからAを算出、Aの場合、判明しているAと査定されたRからPを算出することになる。いずれの場合もRは査定された数値である。不動産鑑定評価において、@は収益価格を求める場合の、Aは積算賃料を求める場合の計算式である(必要諸経費等の加除については捨象)。
上記@Aの場合と異なり、Bの場合、Rは査定された数値ではなくAとPから結果的に算出されたものになる。収益物件の広告に表示されるRはこれである。Aが「満室想定」である場合も多いが、一応それを前提にRが算出されている。
さて、上記@によって求められる収益価格は、積算価格(土地価格+建物価格)に比して低目に求められることが知られている。経験的にそんなものだと認識されており、その理由について分析・説明されている文献はあまり見当たらない。
収益価格の積算価格に対する割合は、地域にもよるが、賃貸事務所ビルやワンルームマンションなら80%、ファミリーマンションなら70%、一戸建住宅なら50%か40%、といったところであろうか。
だが、この既成概念を無視して収益価格≒積算価格を前提(理論的にはそうなるとする説もある)とするなら、そうなるような利回り(「収益積算均衡利回り」と呼ぶこととする)こそが真に適正な利回りとなる。下表は、新築間もない(ア)事務所ビル、(イ)マンション、(ウ)一戸建住宅の積算価格と、一般的な利回りで試算した収益価格及び収益積算均衡利回りである。なお、利回りは、必要諸経費等を含んだ利回り(表面利回り)とした。
土地 | 建物 | 建物/土地 | 計(積算価格) | |||||
u | 千円/u | 百万円 | u | 千円/u | 百万円 | 百万円 | ||
ア | 1,000 | 2,000 | 2,000 | 6,000 | 300 | 1,800 | 90.0% | 3,800 |
イ | 500 | 600 | 300 | 1,000 | 250 | 250 | 83.3% | 550 |
ウ | 100 | 250 | 25 | 100 | 200 | 20 | 80.0% | 45 |
収益A | 利回り R |
A/R(収益価格) | 収益/積算 | 収益積算 均衡利回り |
||||
有効率 | u | 円/月u | 千円/年 | 百万円 | ||||
ア | 80% | 4,800 | 3,300 | 190,080 | 6.0% | 3,168 | 83.4% | 5.00% |
イ | 90% | 900 | 2,500 | 27,000 | 7.0% | 386 | 70.1% | 4.91% |
ウ | 100% | 100 | 1,200 | 1,440 | 8.0% | 18 | 40.0% | 3.20% |
事務所ビルの収益積算均衡利回りはこれまでの常識的利回りより少し低く見れば(と言うかそれが現実?)収益価格は積算価格と均衡する。マンションは事務所ビルよりさらに低く見れば(と言うかそれが現実?)均衡する。一戸建住宅も3.2%程度にすれば(と言うかそれが現実?)均衡する。
もしかすると積算価格>収益価格、は根拠のない慣例、習わし、固定概念に過ぎないのかも知れない。