BRIEFING.588(2022.11.28)

「延長」ばかりの税制改正で税制継続

先般、自民税調が令和5年度の税制改正大綱のとりまとめに着手したところであるが、各省庁は「令和5年度税制改正要望事項」を8月末にすでに取りまとめ、財務省に提出している。

今回、国交省が要望した項目は全部で60(他省庁主管の7つ含む)。そのうち租税特別措置法による2年間または3年間の措置の延長を求めるものが38件もある。この他、拡充・縮減等を伴う延長が7つあるから、延長は計45件となる。

お馴染みのものとしては、長期保有土地等の事業用買換え特例がある。

財務省資料によると、この制度は平成6年(1994年)度創設で、途中、拡充・縮減も伴いながら主に3年間の延長を繰り返し、令和2年度に3年間の延長を経て今年度末で期限を迎えるため、今回令和5〜7年度の3年間の延長を求めるものである。

土地の所有権移転登記の登録免許税軽減(本則2%が1.5%)は2年間の延長が要望されている。

これは平成15年(2003年)度創設で、主に2年間ずつ延長され、令和3年に2年間の延長を経て今年度末で期限を迎えるため、今回令和5〜6年度の2年間の延長を求めるものである。

古いものとしては三大都市圏の政策区域における事業用買換え特例がある。

昭和44年(1969年)度創設で、条件変更を伴いつつ、延長を繰り返し、令和2年度に3年間の延長を経て今年度末で期限を迎えるため、今回令和5〜7年度の3年間の延長を求めるものである。

新しいものとしては、低未利用地の100万円控除がある。

令和2年(2020年)度創設で、今年度末で3年間の期限を迎えるため、今回令和5〜7年度の3年間の延長を求めるものである。初めての延長であるが、当初から延長を目論んでいたことは間違いないだろう。

このほか、不動産業界でよく知られている、新築住宅の固定資産税減額、住宅用家屋の登録免許税率軽減、居住用財産の買換え特例などは、今回、期限を迎えないので「延長」を要望する必要はない。なお地方税については、租税特別措置法ではなく地方税法附則の改正による対応だ。

さて、このように「延長」が想定される税制は、恒久的な税法改正で対応できないものだろうか。本則を改め、必要に応じその本則を改正すればよい。3年または2年毎にほとんどが「延長」されるのに、その都度議案に上げる必要性は低いのではないだろうか。税制「改正」と言いながら実は税制「継続」が多い。

恒久的ではなく、2〜3年の減税なら受け入れられ易いのだろうが、2〜3年毎に「延長」を認めてもらう必要があるから、その都度、財務省に貸しを作ってしまうような感じもある。さらに、業界の応援を背に既定路線の「延長」を勝ち取り「仕事したぞー」というポーズになってはいないだろうか。それよりも新たな施策に知恵を絞り、時間を割いて議論してもらいたい。

一方、財政健全化も大事である。安易な恒久減税を慎み、2〜3年毎に「延長」するかしないかを俎上に上げて議論することも必要だ。「3年間の約束だったじゃないの」「いやいや、そうは言っても未だ勤労者の住宅取得は容易でないし・・・」そんな再吟味を忘れないための2〜3年毎なのだろうか。


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