BRIEFING.595(2023.03.31)

不動産鑑定評価における「類型」の分類

不動産の「類型」とは「その有形的利用及び権利関係の態様に応じて区分される不動産の分類」をいう。そしてこの分類により、建物及びその敷地については、@自用の建物及びその敷地、A貸家及びその敷地、B借地権付き建物、C区分所有建物及びその敷地等に分けられる。

@Aについては、建物が賃貸借に供されているか否かで区分され、対になる概念である。

Bはそれとは違う切り口からの見方で、敷地所有者と建物所有者が別人で、敷地が借り物(借地)である場合である。したがって、これに重ねて@Aの区分もすることができる。即ちBは「借地権付き建物(自用)」と「借地権付き建物(貸家)」に分けられる。さらに重ねて次のCか否かの区分をすることができる。

Cもまた別の面からの区分であり、それに重ねて@Aの区分もすることができ、さらにBか否かの区分もすることができる。

つまり「類型」は次の3つの分類の掛け合わせ(2×2×2=8)で生ずる8つに分類されるものである。冒頭の4分類(@〜C)を並列に記載することには違和感がある。

T.建物に借家権が付着しているか否か(@かAか)。
U.敷地が借地権か建物所有者と同一人の所有か(Bか非Bか)。
V.建物が区分所有であるか否か(Cか非Cか)

「日本に住む人は次の@〜C等に分けられる」と言われたらどう思うだろうか。
@男、A女、B外国籍の人、C既婚者。この違和感と同じである。

不動産鑑定評価基準は、建物及びその敷地の類型として冒頭の@〜Cを示し「・・等に分けられる」としている。そうではなく、前述のT〜Vで整理したように、建物所有権とその使用権の関係(T)、建物所有権とその敷地である土地の使用権の関係(U)、一棟の建物とその一部(専有部分)の所有権の関係(V)、という3つの観点から分類できる、と記述すべきであろう。

なお、現実の不動産には、前述の8分類がいくつか併存している場合がある他、それ以外の肢、例えばTについては建物使用借権があり、また借家権の細分類肢として定期借家権と普通借家権がある。Uについては土地使用借権があり、また借地権の細分類肢として定期借地権(細々分類あり)と普通借地権がある。Vについてもいくつかのタイプがある。


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