BRIEFING.60(2003.7.24)

隣地併合による増分価値の配分

不整形地の所有者が隣接地を取得して併合した結果、併合後の土地の形状が整い、その価値が、併合前のそれぞれの土地の価値の合計を上回る場合がある。したがって、併合を目論む土地所有者は、被併合土地を、その単体としての市場価格よりある程度高く買うことができる。

ところが、事情を知る被併合土地の所有者は、併合を目論む土地所有者が買取りをあきらめる直前のギリギリの価格で売りつけようとするであろう。

このような両当事者のみからなる市場(?)で形成される市場価値(?)を、適正に表示する価格を限定価格という。

限定価格を求めるに当たっては、併合によって生ずる増分価値を両当事者に如何に公平に配分するかが問題となるが、具体的には次の方法がある。

折半法・・・・・・・・単純に折半。
面積法・・・・・・・・土地の面積比により按分。
単価法・・・・・・・・土地の単価比により按分。
総額法・・・・・・・・土地の総額比により按分。
買入限度額法・・相互に相手方の土地を買い得る合理的最高額で按分。

買入限度額法は、併合後価格からA氏所有地の単体価格を引いた額(A氏にとってのB氏所有地買入限度額)と併合後価格からB氏所有地の単体価格を引いた額(B氏にとってのA氏所有地買入限度額)との比で増分価値を按分するものである。やや煩雑だが最も合理的な配分方法と言えよう。

しかし、公平な限定価格での取引を申込んでも、それを承諾するか否かは、もちろん相手方の自由であるし、相手方は、本当は取引したいと思ってもその気がない振りをしたり、他にも取引相手がいるかのように装ったりするものである。

申込んだ方も申込んだ方で、いやならいいんだけどという素振りを見せたり、逆に泣き落としに出たり、機嫌を取ったりと、策を弄する。

その結果、実際に成立する価格は、双方の抱える事情と欲望とを背景とした交渉ゲームの上手下手に大きく左右されるであろう。


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