BRIEFING.600(2023.06.15)

津波災害警戒区域と特別警戒区域

「津波防災地域づくりに関する法律」は、東日本大震災を教訓として2011(平成23)年12月に制定されている。国土交通大臣は、この法律に基づき、津波防災地域づくりの推進に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めている。

都道府県はこれを受けて「基礎調査」を行い都道府県知事は「基本指針」に基づき、かつ「基礎調査」の結果を踏まえ、「津波浸水想定」を設定し公表することになる。「津波浸水想定」とは、津波があった場合に想定される浸水の区域及び水深のことである。

さらに市町村は、「基本指針」に基づき、かつ「津波浸水想定」を踏まえ津波防災地域づくりを総合的に推進するための計画(以下「推進計画」という。)を作成することができる。

また、それと並行して、都道府県知事は「基本指針」に基づき、かつ「津波浸水想定」を踏まえ「津波災害警戒区域」と「津波災害特別警戒区域」を指定することができる。

「津波災害警戒区域(法第53条は「津波が発生した場合には住民その他の者の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における津波による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域」に指定される。

「津波災害特別警戒区域」(法第72条は「警戒区域のうち、津波が発生した場合には建築物が損壊し、又は浸水し、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為及び一定の建築物の建築又は用途の変更の制限をすべき土地の区域」に指定される。

前者は「・・・体制を特に整備すべき土地の区域」であるのに対し、後者は「・・・の制限をすべき土地の区域」と私権の制限(延いては地価の下落)にもつながる内容となっている。

では、これらの「設定」「作成」「指定」の進捗状況はどうなっているだろうか。国交省はこれらを2023年4月17日現在で公表している。

それによると、「津波浸水想定」設定済みの都道府県は40都道府県であり、100%設定済みである。足りない7つは、長野・群馬・栃木・埼玉・山梨・滋賀・奈良の7県で、海がないから設定対象外となっている。なお、東京都は今のところ島嶼部のみ(大島、新島、式根島、八丈島他)の設定となっている。

これら40都道府県のうち、「津波浸水想定」を踏まえて指定される「津波災害警戒区域」指定済みの都道府県は25道府県であり、「津波災害特別警戒区域」指定済みの都道府県は静岡県のみで、伊豆市において唯一指定がある。

ちなみに「推進計画」作成済みの市町村は20市町あり、根室市、小田原市、静岡市、焼津市、磐田市、浜松市、串本町、日向市、宮崎市等、太平洋に面した市町ばかりである。

さて、東京都、大阪府等、まだいくつかの都府県で「津波災害警戒区域」が未指定である。但しこれらの都府県では、指定の必要がないから未指定になっているのではなく、まだ指定が間に合っていないから指定がないだけであることを理解しておかねばならない。また、指定済みの道府県においても、追加で指定される可能性がある(これまでにも複数回に分けて指定してきた道県は多い)。

宅建業法上の重要事項説明においても、その旨、補足して説明することが望まれている。


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