BRIEFING.602(2023.07.06)

「留保財産」に選定される未利用国有地

法務局は不動産業界にとって身近な役所の1つであるが、その大阪法務局が、大阪市中央区谷町2丁目の大阪第2法務合同庁舎から、昨年新築された同区大手町3丁目の大手前合同庁舎へ、本年5月1日に移転した。前庁舎(国有地)は2021年4月22日、近畿財務局の「国有財産近畿地方審議会」において「留保財産」に選定されている。

従来、未利用国有地の内、国として保有する必要のないものについては、速やかに売却することが原則であったが、その結果、未利用国有地のストックが減少し、国有財産の希少性が高まってきたため、近年は、有用性が高く稀少な国有地については、国が所有権を留保し、定期借地権による貸付で有効活用(最適利用)を図っていくよう見直されている。

このようにして売却を留保された不動産は「留保財産」と呼ばれ、2019年9月20日の財務省理財局長通達(2023年3月3日最終改正)に詳しく定められている。

「留保財産」の有効活用に当たっては、用途を限定せず、民間へのヒアリング等を行い、地方公共団体からも意見を聞き、利用方針が策定されることとなっている。

前述の通達によると、選定の「地域・規模に関する原則的要件」は次の通りである。

イ.1,000u以上の財産を留保すべき地域
 東京都(23区・武蔵野市・三鷹市)。

ロ.2,000u以上の財産を留保すべき地域
 北海道(札幌市)、宮城県(仙台市)、神奈川県(横浜市・川崎市・相模原市)、埼玉県(さいたま市・川口市)、千葉県(千葉市)、新潟県(新潟市)、石川県(金沢市)、愛知県(名古屋市)、静岡県(静岡市・浜松市)、大阪府(大阪市、堺市、守口市、東大阪市)、

京都府(京都市)、兵庫県(神戸市・尼崎市・西宮市・芦屋市)岡山県(岡山市)、広島県(広島市)、香川県(高松市)、愛媛県(松山市)、福岡県(福岡市、北九州市)、熊本県(熊本市)、沖縄県(那覇市)。

前述の大阪法務局跡地は、大阪市の4,727.26uで上記要件を満たしており、谷町筋に面した容積率800%の土地で「有用性が高く稀少な国有地」であろう。現在利用方針策定中だ。

関東財務局における「留保財産」見てみると、まず千代田区大手町1丁目の政府刊行物センター跡地(1,153.71uで上記要件充足)があげられる。しかし、2019年12月23日に「留保財産」に決定されてから相当の年月を経たが、利用方針は未定のままだ。北隣の旧気象庁敷地(国有地)の一部と南隣の東京消防庁敷地(都有地)の交換を経た後、国有地の一体開発に組み込むという構想はあるが、当面は「留保財産」のままと見込まれる。


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