BRIEFING.603(2023.07.20)

ホテルを潜る「参道」は非課税?

京都の東本願寺(真宗本廟)は真宗大谷派の本山、西本願寺(龍谷山本願寺)は浄土真宗本願寺派の本山である。両派はともに大阪の拠点として、東本願寺は南御堂(真宗大谷派難波別院)を、西本願寺は北御堂(本願寺津村別院)を置いている。

京都では東と西、大阪では南と北という相違はあるが、ともに町の中心で互いに徒歩圏というのは偶然だろうか。ちなみに京都人は、親しみを込めて両本願寺を「おひがし」「おにし」と呼ぶ(大阪で「おみなみ」「おきた」とは決して言わない)。

さて、南御堂は寺の敷地の一部(御堂筋に面した間口部分)2,589uを分筆し、定期借地権を設定して積和不動産関西(株)(現・積水ハウス不動産関西(株))に賃貸し、同社はそこにビルを建てている(2019年8月27日新築)。賃借権の存続期間は2017年10月1日から60年間。公簿地目は分筆前と同じく「寺院境内地」。路線価から推定した地価に対して地代は案外安い。背後の寺院に配慮した設計だからだろうか。

ビルの1〜4階は店舗等。5〜17階は「大阪エクセルホテル東急」。但し1〜3階の真ん中には、高さ13m、幅21mの開口部があり、南御堂への参拝者はこれを潜り抜けて本堂に向かう。つまりホテルが寺の参道を跨ぎ、山門と一体になっていると言ってもよい。

問題はこの「参道」部分(約200u)だ。これが固資・都計税が非課税(地方税法第348条第2項、第702条の2第2項)となる宗教法人の「境内地」に該当するか否かが争われた。土地の所有者は宗教法人だが、収益事業用地だとして、大阪市が課税したところ、寺側がこの部分について課税の取り消しを求めて大阪地裁に提訴。一審はこれを棄却したが、寺側がこれに控訴。そして先月、大阪高裁は市の課税処分を取り消す判決を下した。

大阪高裁は当該「参道」について「一切の使用収益行為が禁止され、課税対象の建物が存在する空間とそうでない参道空間が混在している」とし、「参道」に対する固都税約590万円のうち約480万円を取り消したという。その算定根拠は明らかでないが約81%を「境内地」と判断したことになる。

思うに「参道」の上空は、13mの空間(1〜3階分)と4〜17階のホテル等であるから、階数で按分して3/17(約18%)が「境内地」と考えることもできる。それに階層別効用比を考慮して30%程度と見てもよかろう。但し1〜3階に床はなく、実際には通路としての効用しか得ていないことに鑑みれば、逆にその割合をもっと少なく見るべきだろう。いずれにせよ「参道」も建築基準法上はホテルの敷地。その上に積み重なったホテルを見上げれば、その81%が「境内地」とはいかがなものか。市は上告している。最高裁の判断は?


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