BRIEFING.604(2023.07.27)

「土地白書」に見る土地に関する動向

先月13日に閣議決定され公表された「土地白書」は土地基本法第11条の規定に基づき、毎年国会に報告される。その第1部第1章の冒頭には、前年度の土地に関する動向等が簡単に述べられている。その部分を、過去4年分に渡って以下に引用する。

●令和4年度の土地に関する動向(令和5(2023)年版より)
 令和4年度は、地価公示の全用途の全国平均が2年連続で上昇し、Jリート市場の時価総額が昨年度に引き続き高水準であるなど、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、緩やかな持ち直しが続いている。

●令和3年度の不動産市場等の動向(令和4(2022)年版より)
 令和3年度の不動産市場については、地価公示の全用途の全国平均が2年ぶりに上昇に転じ、Jリート市場の時価総額が過去最高を記録するなど、回復の兆しが見えている。

●令和2年度の不動産市場等の動向(令和3(2021)年版より)
 令和2年度の我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けている。

●令和元年度の不動産市場等の動向(令和2(2020)年版より)
 令和元年度の不動産市場については、雇用・所得環境の改善や緩和的な金融政策等が続く中、依然として、堅調なオフィス需要により空室率の低下・賃料の上昇傾向が継続するとともに、首都圏・近畿圏におけるマンション価格も高水準で推移するなど、良好な状況が継続し、このような状況を背景に、地価についても、全国で上昇が継続するなど、底堅く推移した。
 一方、令和2年に入り、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大した影響により、内外経済が下押しされ始め、不動産市場全体への影響が想定される中、Jリート市場の値動きには影響がみられている。

なお、令和元年度〜3年度の第1部第1章のタイトルは「不動産市場等の動向」であったが、4年度は「土地に関する動向」と改められ、また第1部の第2章がなくなって第1章のみとなったことから第1部には章の番号がなくなり、番号のない章となっている。

元年度の「動向」は他年度に比べ極めて長い。年度の終盤に、屋形船やクルーズ船での集団感染、有名人の逝去等で環境は一変した。冷静な文章の行間に先の見えぬ戸惑いが感じられる。2年度の「動向」は極めて簡素で、新型コロナの前に立ち竦んでいるかのようだ。3年度には「回復の兆し」、4年度には「正常化が進み」「持ち直し」に至っている。

土地白書は「動向」(第1部)の他、前年度の「講じた基本的施策」(第2部)、今年度の「講じようとする基本的施策」(第3部)からなる。堅調な「動向」の下「基本的施策」が推進されてゆくことを願う。


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