BRIEFING.605(2023.08.31)

不整形地の減価(1)

土地に建物を建てることを想定した場合、その土地の形状は、少なくともその1辺が道路に面した正方形または長方形であることが望ましい。しかし現実には、平行四辺形であったり、台形であったり、三角形であったり、旗竿地(長方形の土地の端から道路につながる細い通路がある土地)であったり、ということも多く、このような土地は、不整形地と呼ばれ、整形地(正方形や長方形)に比べ、価格(単価)が安いのが通常である。

この時、どの程度なら不整形地であるかは、定かではないが、その減価の程度を判断する上で大切なポイントの1つはその不動産の規模である。そこで大中小3つの相似形で考えてみる。ここでは、まっすぐな道路に面した、間口(底辺)1:奥行(高さ)2の直角二等辺三角形を想定する。

  間口(底辺) 奥行(高さ) 地積 最大長方形 減価率
@小規模三角形   20m  10m 100u  50 u −33.3%(0.667)
A中規模三角形   30m  15m 225u 112.5u −25.0% (0.750)
B大規模三角形   40m  20m 400u 200 u −15.0% (0.850)

上記@〜Bの三角形について、それぞれ同地積の正方形(10m×10m、15m×15m、20m×20m)の単価と比較し、どの程度の減価が妥当か検討してみる。その際、各三角形について、内接する最大長方形(中央部分)と、それ以外の部分(両端と奥の3つの三角形)とに分けて考えてみた。

@の場合、設計には一工夫必要だ。内接する最大長方形(間10m×奥5m)の部分(50%)については標準画地と同単価とみて、3つの三角形部分の単価を標準画地の1/3と見ると、全体では標準画地に対して33.3%程度の減価となる(50%×100%+50%×1/3=0.667)。

Aの場合、まともな建物が建てられるが、3つの三角形部分は無駄だ。@と同様に考えて、3つの三角形部分の単価を1/2と見ると、全体では標準画地に対して25.0%の減価となる(50%×100%+50%×1/2=0.750)。

Bの場合、立派な建物が建てられそうだが、やはり両端と奥の三角形部分は有効に活用できそうにない。@と同様に考えて、3つの三角形部分の単価を7ガケと見ると、全体では標準画地に対して15.0%の減価となる(50%×100%+50%×0.7=0.850)。

感覚的に査定してみたが、上記減価率は妥当だろうか。

細かい減価率の当否はさておくとして、上記の通り傾向としては規模が大きくなるほど減価率が下がるということは間違いないだろう。もっと小さい画地、例えば間口10m×奥行5m(25u)なら、減価率は−50%ではすまないだろう。車1台停めるのがやっとだろうか。もっと大きな画地、例えば間口100m×奥行50m(2,500u)となれば、不整形であるための減価はあまり考えなくてよいかも知れない。

以上の例は、非常に極端な不整形の場合であるが、傾向としては、僅かな不整形の場合においても同じであろう。

国税庁の財産評価基本通達にも、不整形による評価割合(補正率)が示されている。それは、地域の相違(普通住宅地区とそれ以外)の他に画地の規模の相違(ABCの3段階、但しこれも地区により異なる)によって減価の程度を区分して定めている(同通達付表4及び5参照)。

繁華街地区なら、450u未満がA区分、450〜700u未満がB区分、700u以上がC区分だ。普通住宅地区なら、500u未満がA区分、500〜750u未満がB区分、750u以上がC区分だ。

次回は感覚的に査定した減価率と、財産評価基本通達に基づく補正率を比較してみる。


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