BRIEFING.606(2023.09.07)

不整形地の減価(2)

前回、斜辺を間口とする直角二等辺三角形の土地が、その不整形故にどの程度減価すべきかを、感覚的に検討してみた。その結果は次表の通りである。規模が大きいほど減価率は小さい傾向が分かる。

  間口(底辺) 奥行(高さ) 地積 減価率
@小規模三角形   20m  10m 100u −33.3%(0.67)
A中規模三角形   30m  15m 225u −25.0%(0.75)
B大規模三角形   40m  20m 400u −15.0%(0.85)

国税庁の財産評価基本通達にも「不整形地の評価」が規定されている。その方法には4つありいずれかの方法で評価することとされている。

ここでは「不整形地の地積を間口距離で除して算出した計算上の奥行距離を基として求めた整形地により計算する方法」で前回の@〜Bについて試算してみる。

  計算上の奥行 奥行価格補正率 かげ地割合 不整形地補正率 相乗積
@小規模三角形   5.0m   0.92 50%  0.79 0.7268
A中規模三角形   7.5m   0.95 50%  0.79 0.7505
B大規模三角形  10.0m   1.00 50%  0.79 0.7900

奥行価格補正率は、普通住宅地区の場合を採用した(同通達付表1参照)。

「かげ地割合」とは次の算式により計算した割合による。

「かげ地割合」=(想定整形地の地積−不整形の地積)/想定整形地の地積

想定整形地の説明は省くが、前回の@〜Bのかげ地割合は上表の通り。いずれも相似形であるため同率(50%)だ。不整形地補正率は、@〜BのいずれもA区分(500u未満)であるため、やはり全て0.79で同率となる(同通達付表4及び5参照)。

ABCの区分により、規模が大きいほど補正率が小さくなるよう設定されているが、普通住宅地においては500u未満はみんなA区分でかなり大雑把だ。

さて、奥行補正率と不整形補正率の相乗積を見てどうだろうか。感覚的な減価率と、通達による補正率(相乗積)を比較すると、後者の方がやや甘い。一般に市場で感じられる減価率よりも小さく設定されているように思われる(同意見の方は多いだろう)。

同通達では、不整形の程度を「かげ地割合」という概念で数値化し、誰が評価しても同じ補正率が求められるようになっている。確かに「感覚的に」では評価する人によって差が生じ、公平性が保てない。したがってこのような仕組みは必要だろう。

ただ、甘めの設定は感心しない。かげ地割合の区分の最大は65%であるが、普通住宅地の場合、そのような土地でも補正率はA区分で0.60、B区分で0.65、C区分で0.70である。奥行価格補正と間口狭小補正を重複適用可だが、その最小値は0.60と下限が決められている。

市場には、不整形であるが故に標準画地価格に対し、三分の一、四分の一、五分の一といった価格で取引される土地も少なくないだろう。しかし通達に依れば、このように大幅な補正率はあり得ない。

これでは、市場の減価の感覚にそぐわない。数値化は大事だが、感覚的な減価率に概ね一致するよう工夫できないか。AIの出番だろうか。


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