BRIEFING.607(2023.10.18)

混在する「ちょう」と「まち」

「本町」は多くの都市にある地名であるが、その読み方には主に2通りあり、大阪市では「ほんまち」仙台市青葉区では「ほんちょう」である。この他「まち」派は豊中市、八尾市、姫路市、和歌山市、渋谷区、府中市、武蔵村山市、前橋市などにあり、「ちょう」派は中野区、国分寺市、小金井市、八王子市、山形市、水戸市などにある。「まち」が若干西に、「ちょう」が東に多い感じはあるが混在している。

語呂の善し悪しも関係なさそうだ。

さらに、旭川市や佐倉市、須賀川市では「もとまち」と読む。「元町」という地名も多いから混乱しそうだ。

「本町」だけでも全国に多数みられるが、「〇〇本町」や「本町通り」まで加えると大変な数になりそうである。さらに「本」にこだわらない「〇〇町」の数は数え切れまい。

東京都千代田区について「〇〇町」を調べてみると、その読み方は次の通りだ。

「ちょう」・・隼町、平河町、紀尾井町、神田神保町、神田三崎町、神田猿楽町、その他多数。
「まち」・・・麹町、神田小川町のみ。

東京都港区では次の通り。

「ちょう」・・浜松町、神谷町、麻布狸穴町、麻布永坂町。
「まち」・・・田町のみ。

一方、大阪市中央区について調べてみると次の通りだ。

「ちょう」・・粉河町、材木町、十二軒町、釣鐘町、徳井町、馬場町、龍造寺町のみ。
「まち」・・・安土町、淡路町、道修町、博労町、谷町、久太郎町、本町、平野町、その他多数。

京都市中京区については、南北の通り名について見てみる。

「ちょう」・・車屋町、麩屋町のみ。
「まち」・・・新町、室町、両替町、間之町、堺町、御幸町、寺町、河原町。

こう見てくると「まち」が西に、「ちょう」が東に多い傾向は明らかだ。

ちなみに、群馬県沼田市には「上之町」「中町」「下之町」があるが、それぞれ「ちょう」「まち」「ちょう」で統一性がない。「中町」は「上」「下」両町の間に位置しているのにだ。

ところで、地方自治体としての「町」の読み方はどうだろうか。

これについては、いくつかの調査結果が公表されているが、驚いたことに前述の「傾向」とは全く逆なのである。つまり、「まち」が東に、「ちょう」が西に多いのである。

例えば福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・富山では100%「まち」、岐阜・福井・愛知・近畿2府5県・四国4県・島根を除く中国4県・長崎・宮崎・鹿児島・沖縄では100%「ちょう」である。ただ例外もあって、北海道は1町を除いて全て「まち」であり西の傾向だ。逆に福岡県は1町を除いて全て、大分は全てが「ちょう」であり東の傾向にある。

このような「傾向」は総務省でも把握しておらず、地方自治法にも「町」の読み方に関する定めは見当たらず、ただ「従来の名称による」(同法3条1項)と述べるのみである。


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