BRIEFING.609(2023.11.16)

建材の再利用と建物再調達原価

岡山県津山市は県北部に位置し、北は鳥取県に接する市である。江戸時代には津山城の城下町として発展し、今も当時の遺構や古い町並みが残る市である。市制の施行は昭和4年だ。

市の中心部から北東方、県道と市道の交差点にあった自動車販売店が昨年閉店し、その後建物が取り壊されていたが、今月その跡地にコンビニエンスストアがオープンした。

さて、この新しい店舗、県内の他の場所で閉店した店で使用されていた鉄骨や屋根などを活用して建てられたものだという。重量ベースで全体の9割は再利用品で賄われ、これにより建設コストも3割程度減らせた模様だ。これまでも、商品棚等の備品の再利用はあったものの、屋根や柱の再利用は初めてらしい。確かに、動産の再利用は当然だろうが、不動産の一部を再利用する話はあまり聞かない。

資材の分別解体、再資源化は、建設リサイクル法の制定により定着し、鉄骨は「鉄くず」とされてから鉄製品に生まれ変わる。だが、従前の屋根を屋根のまま、柱を柱のまま再利用するのは、また別の新しい動きである。ただ、再利用品の品質がどうなのかという懸念はある。劣化の具合はどうか、傷はないか・・・。市場での売却・流通は難しいかも知れない。

一方、中古住宅、ビル等の建物が市場で流通していることは言うまでもない。それを思えば、中古の屋根や柱が使われた「新築」建物も一定の信頼を得ることができるのではないだろうか。

ちなみに、中古の建材を使用したとしても、建築基準法上も不動産登記法上も「新築」と扱われる。中古建材だらけでも「新築」とは妙なものだが。

ところで、不動産鑑定評価によって不動産の価格を求める手法のひとつ、原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である。この手法による試算価格を積算価格という。再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいう。

そして再調達原価は、建設請負により、請負者が発注者に対して直ちに使用可能な状態で引き渡す通常の場合を想定し、発注者が請負者に対して支払う標準的な建設費に発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算して求められる。

普通、再調達原価は、言うまでもなく新品の建材使用を前提とする。対象不動産の一部が、安価な中古建材で調達されたものであったなら、その価格を再調達原価に反映させねばなるまい。さらに減価修正に当たっても、中古建材の経過年数を反映させるべきだろう。外観からは窺い知れない事実であるし、分かったとしてもそれを反映させる作業は煩雑だ。

固定資産税の基礎となる、固定資産評価における再建築費を求める際にも、面倒だがこのことを反映させなければなるまい。


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