BRIEFING.616(2024.03.31)

今年の地価公示は「人流回復公示」

地価公示法に基づき、令和6年1月1日時点の標準地の正常価格が公示された。

それによると、全国・全用途平均は3年連続の上昇で、その率は2.3%、昨年を大きく上回り、バブル期以来33年ぶりの高さである。用途別に見ると、住宅地は2.0%、商業地は3.1%でともに昨年を大きく上回る上昇率であった。

三大都市圏を見てみると、東京圏・大阪圏・名古屋圏は、全用途平均、住宅地、商業地においていずれも昨年を上回る上昇であった。中でも、東京圏の商業地の5.6%は目立つ。事務所に人が戻り、繁華街へ繰り出す人も増えたと見られる。外国人観光客が戻ってきたのも大きい。人流は確実に回復している。

それにも増して元気なのが地方4市(札幌・仙台・広島・福岡)だ。全用途平均、住宅地、商業地の上昇率は、7.7%、7.0%、9.2%だ。ただ、いずれも前年の上昇率を下回っているのが気になるが・・・。

そこで今年の地価公示を「人流回復公示」と名付ける。

TSMCの熊本県大津町と菊陽町、ラピダスの北海道千歳市の話題も外せないがここでは省略する。

なお、公示価格の価格判定の基準日は1月1日である(地価公示法施行規則第2条)。しかしその基準時刻までは定められていない。となると本年元旦(16時過ぎ)の能登半島地震の影響はどうなるのだろうか。

国土交通省「地価公示の見方について」によると「・・・の価格判定の基準日(令和6年1月1日)の状況により行いました。なお、令和6年1月1日午前0時以降に発生した能登半島における地震による影響は反映されていません。」とのこと。昨年までこの「なお」以下はなかったが、これによって「基準日時」は1月1日午前0時と示されたことになる。

ところで、当事務所では昨年の「〇〇公示」の命名・公表を失念していた! そこで今更ながら命名することとする。昨年(2023年)の地価公示は「オミクロン公示」だ。

新型コロナウイルスのオミクロン株は第6波、第7波として全国に広がったものの、その致死率は比較的低く、季節性インフルエンザの致死率と同程度だそうだ。うまく付き合えば大事に至らずやり過ごせる場合が多い。これなら経済活動も正常化できるかも。

その後の2023年5月8日には、新型コロナの感染症法上の分類が「2類相当」から、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられた。それに伴い経済活動の正常化が進み、2024年1月1日の「人流回復公示」へとつながった。

因みに「オミクロン」とはギリシャ文字の15番目の文字。そして奇しくも2023年は2008年のリーマンショックから丸15年であった。

地価は概ねコロナ前を回復した。それに至る近年の地価公示の名称を、以下に振り返ってみる。

 ●2020年(令和2年) オリンピック公示・・・・結局1年延期
 ●2021年(令和3年) 新型コロナ公示・・・・在宅勤務でオフィス余剰
 ●2022年(令和4年) Withコロナ公示・・・・・コロナと共存へ
 ●2023年(令和5年) オミクロン公示・・・・・・弱毒化で経済活動回復へ
 ●2024年(令和6年) 人流回復公示・・・・・・5類移行で人が街へ


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