BRIEFING.617(2024.04.25)

「新築」なのに「改築」?

新築マンションの価格高騰により、中古マンションへの需要がシフトした結果、新築・中古の価格差が縮小傾向にある。とは言え「新築」の魅力は大きい。

ところで、「新築」の定義は、それを扱う世界によって様々である。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」は「新築住宅」を「新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して1年を経過したものを除く)」と定義している。良質な住宅を安心して取得できる住宅市場を整備するという観点からの定義だろう。

一方、「不動産の表示に関する公正競争規約」は「新築」を「特定用語」の1つとし、その「使用基準」を「建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないもの」と定めている。築後1年超のものや、一旦人が住んだものを「新築」と表示(広告)してはダメという趣旨である。

両者の内容は概ね一致しており、常識的な感覚からも外れてはいないだろう。

ところが、意外にも「建築基準法」に「新築」の定義はなく、「建築」について「建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転すること」(建基法2条13号)と定義しているにすぎない。建基法に「新築」の定義がないのは困ったものである。但しその概念は定まっている。

国交省が建築主等に対して行っている「建築動態統計調査」の「提要」には以下の説明が見られる。なお「提要」とは、事柄の要点といった意味である。

●新築・・・既存の建築物のない新たな敷地に建築物を建てる工事をいう。
●増築・・・既存の建築物のある敷地内において床面積の合計が増加する工事をいう。
●改築・・・建築物の全部若しくは一部を除却し、又は建築物が災害によって滅失した後、引き続いて用途、規模、構造の著しく異ならない建築物を建てる工事をいう。従前のものと著しく異なるときは、新築または増築とする。

これにはちょっと違和感を持たざるを得まい。

従前の建物を取り壊して建替えても、従前のものと「著しく異ならない」ときには「新築」ではなく「改築」となる。前述の品確法や公正競争規約の考え方とは異なる考え方である。更地に自宅を「新築」したつもりが、従前の建物がたまたま「著しく異ならない」住宅であったなら「改築」とされてしまう。新築祝いも改築祝いになってしまうのか・・・。

「新築」「増築」「改築」の区別を「工事種別」と言い、建築確認申請書や建築計画概要書にそれを記載することとされているが、その第三面(建築物及びその敷地に関する事項)並びに、第四面(建築物別概要)の両方にそれを記載し(選択してチェックを入れ)なければならない。第三面では敷地単位での「工事種別」を、第四面では申請棟の「工事種別」を選択することになる。そのため、敷地内に別棟を建築する場合は、第三面では「増築」、第四面では「新築」を選択することになる。少々面倒ではあるが、建基法の「新築」の考え方が、これでよく理解できよう。

さて、建物表示登記の面から見るとどうか。やはり「新築」の定義は見当たらないが、「原因及びその日付

」として「〇年〇月〇日新築」と登記簿に登記される。そしてここでは、従前の建物と「著しく異ならない」場合でも「新築」とされる。常識的な感覚に合致する考え方だろう。

隣接・関連業界で定義の共通化が望まれる。


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