BRIEFING.69(2004.2.9)

継続賃料評価における「最終合意」の温度差

継続賃料の評価の手法には、下表の4つがある。このうち@〜Bにその特徴から別称を付するとすれば、同表右の如くなる。

@差額配分法   正常賃料接近法
A利回り法    純賃料利回り復元法
Bスライド法   純賃料額調整・復元法
C賃貸事例比較法  

これら3手法は、現行(従前)賃料に大きく依存するものであるが、特にABは、それが決定された時点における現行(従前)賃料の合理性を尊重したもので、評価時点の正常賃料には全く影響を受けない手法である。

したがって、@が必ず正常賃料への接近を指向するものであるのに対し、ABは必ずしもそうではなく、正常賃料と、より乖離した試算賃料を導き出す可能性を持っている。一般的・客観的合理性より、限定的・主観的合理性に重きを置いた手法と言えよう。

ところで、現行(従前)賃料を決定した時点を「最終合意時点」とも言う。その背景には、賃料の決定に際しては賃貸借の両当事者の合意があったはずで、少なくともその時点においては、両当事者は納得していたはずだとの考えがあると思われる。

しかし現実には様々な事情があって、双方同程度に譲り合い、同程度に納得したかは疑問である。そしてそれは客観的には知る由もない。覚書にも「甲は渋々、乙は感謝しつつ合意した。」などとは記さない。

継続賃料の評価が、最終合意を極めて重く受け止めている以上、鑑定評価の作業に当たっては、両当事者の最終合意に至った内心等を推定し反映させるべきなのであろうか。

なお、賃料を決定・合意した時点と、その授受の始期とを厳密には区別すべきであるが、これについてはまたの機会とする。


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