BRIEFING.007(2001.10.22)

分譲マンション敷地の従前用途

大阪府豊中市で、大手不動産会社の新築分譲マンションが、竣工間近で取壊されるという事件があった。産業廃棄物による土壌汚染が見つかったからである。売主の英断と言えようが、用地取得の段階で分からなかったのだろうか。

土壌・地下水汚染に係る主な物質は、大きく重金属類と揮発性有機化合物(VOC)とに分けられる。重金属類には、カドミウム、六価クロム、総水銀、PCB等、VOCには、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、有機燐、ベンゼン等がある。

これらの汚染があった業種についての調査結果を、平成12年3月環境庁が発表している。これによると「重金属超過」の事例で多い業種は「金属製品製造」で30件、「化学工業」で20件、「VOC超過」の事例では「電気機械器具製造業」35件、「洗濯業」で28件となっている。

さて、最近分譲されたいくつかのマンションの敷地について、地図で従前用途を調査してみた。

旅館、銀行の寮、生命保険会社の寮等、時代を反映するものが目立つ一方、ゴム会社の倉庫、市立病院、薬品工場、ガソリンスタンド、金属精錬所等、危険性の感じられるものもあった。また、市街化区域でありながら長期間竹林、草地であったというところもあったが、産業廃棄物の投棄場所になっていた可能性も否定できず、安心できない。

用地取得の際には、過去の用途を調査し、疑わしい場合には土壌の検査を行う必要がある。マンション購入者もできれば過去の用途を独自に調査し、疑わしい場合には、売主がこれに対しどのような調査をし、どのような結果を得、どのような対策をとったかを、確認すべきであろう。

これに関し東京都では、平成13年4月「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」を施行し、3,000u以上の土地の改変(掘削等)を行う場合には土地の改変者に対し、当該土地の過去の有害物質取扱事業場の設置状況等の調査を義務付けることとしている。

さて、豊中の例のマンション敷地について、従前用途を地図で調査してみると、ある会社の駐車場となっていたことが分かる。周辺の状況から一般の乗用車を停める駐車場とは考えられない。地図を見ただけでも怪しい。たとえ用地取得の段階できれいに整地されされていたとしても、調査すべきであっただろう。

なお、この土地は近所でも評判の不法投棄場所であったということである。知らぬは用地取得者だけだったのだ。


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