BRIEFING.73(2004.4.8)

賃料固定型定期建物賃貸借のリスク

定期建物賃貸借契約においては、従来の賃貸借契約では無効であったいくつかの約束が可能となった。その主たるものとして次の2つがあげられる。

@借地借家法32条(賃料増減額請求権)の不適用。
A賃借人からの解約の禁止(居住用に例外あり)。

この2つにより、賃貸人は安定したビル経営をすることができ、その出資者は安心して出資することができるのである。上場されているいくつかのJリートもこれを積極的に取り入れキャッシュフローの安定化を図っている。

景気後退局面、デフレ時において、確かにこの契約は出資者にとって安心である。

契約期間中は、賃借人から賃料減額請求されることもなく、空室が発生することもない。固定資産税や維持管理費の減少も見込める。その結果、純収益は増加し利回りの上昇が期待できる。

低金利下では、投資対象として相対的魅力が増し、投資口の単価は上昇するであろう。

では、景気回復局面、インフレ時においてはどうか。

賃料相場が上昇しても賃料の改定(値上げ)はできない。一方で固定資産税や維持管理費は上昇するであろう。その結果、純収益が圧迫され利回りの低下が予想される。

仮に合理化で経費の増加を吸収して利回りの維持ができたとしても、金利が上昇し、預金や債権の利回りが良くなってくれば、投資対象としての相対的魅力がなくなり、市場の単価は下落せざるを得ないだろう。

先日のJリートの単価急落は、回転ドアの死亡事故が発端と言われるが、賃料固定型定期建物賃貸借にとってのリスクである、景気回復へのおびえもあったのではないだろうか。


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