BRIEFING.75(2004.7.1)

工場立地法の「特定工場」の一部賃貸借における“集合負担問題”

工場立地法では、工場立地が周辺環境の保全を図りつつ適正に行われるようにするため、「特定工場」の生産施設面積や緑地面積、環境施設面積に一定の基準(準則)を設けている。「特定工場」とは、製造業、電気・ガス・熱供給業者(水力、地熱発電所は除く)の工場で、敷地面積9,000u以上または建築面積3,000u以上のものである。

たとえば、敷地面積に対する生産施設面積の割合は、飲料製造業の場合、30%以内とされている。そして内20%以上は緑地としなければならない(なお、現在同法の緩和が検討されている)。

ある大規模な「特定工場」では、生産規模を縮小し、敷地内に数棟ある工場の内、1棟(平屋)を工場として同業他社に賃貸した。そして数年後、賃料の改定で問題となった。

賃借工場の建築面積は900uで、「特定工場」には該当しない。したがって同法に基づく空地(緑地を含む)を確保する必要はない。しかし賃貸人としては、その900uに対しても工場立地法規定の空地を確保している。

敷地面積の認識は次の通り食い違った。

●賃借人 900u÷  建蔽率60%   =1,500u
●賃貸人 900u÷生産施設面積割合30%=3,000u

これにより2種類の積算賃料が求められた。

このように、分割されれば不必要だが、集合すれば所有者に必要となってくるコストがある。一部を賃借している賃借人にそれを転嫁すべきか否かは悩ましい問題である。

この例の他、現在課税停止中の地価税も同様だ。所有者によっては基礎控除の範囲内であるため地価税を全く負担していないのに、大地主にとって基礎控除の恩恵は微々たるものである。したがって全く同条件の土地であっても、所有者により税負担が異なり、求められる適正な地代も異なってしまうのである。

また、賃貸マンションの1階店舗に係る賃料についても、その土地の固定資産税の負担に関して類似の問題がある。隣接する店舗であっても、上に一定の住宅が乗っていれば敷地全体で小規模住宅用地の特例の適用を受けることができ、上にオフィスが乗っていれば特例はない。その結果、両店舗の負担すべき税額に大きな違いが生じ、求められる適正な家賃も異なってしまう。

これらを「集合負担の問題」と名付けよう。不動産鑑定評価の論点のひとつとして議論してゆく必要がある。


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