BRIEFING.128(2007.01.22)

土地利用に関する新たな規制と既得権

兵庫県芦屋市では、この度、超高級邸宅街で知られる六麓荘町における最低敷地面積を400uとする条例を可決した。もちろん共同住宅は認められない。

これにより、開発・分譲目当てのデベロッパーは手が出せず、需要者は限られ、地域の地価水準は低迷せざるを得ないだろう。しかし貴重な環境が守られることになる。

最低面積が400uでは、建築基準法第33条第4項及び同法施行令第29条の3の定めに反し、財産権の侵害のおそれがあり、その強制力には疑問もある。しかし、地域の監視の元ではこのルールに反することは事実上困難だろう。

一方、京都市は市の中心部の建築物の高さについて、条例により従来からの規制を強化する予定であるが、さらに周辺部においては標高による高さ規制を導入する案もある。市街地周辺の山すその美しい景観を保全する趣旨である。

さて、いずれの規制も既存の不動産にまで影響を及ぼすものではない。

六麓荘町の場合、200uの敷地の家に住み続けることはもちろん、転売も問題ない。建て替えも可能だろう。

京都市の場合、新たに制限に引っかかる既存のビルやマンションについては、同じ高さのものへの建て替えは無理だが、利用・転売には問題がない。

するとこれらの既得権物件は、地域の地価水準より、高価格で取引されると考えられる。400u以上の敷地ばかりの邸宅街の環境を享受する200uの敷地の家は、総額が手頃なため、大変に魅力的である(BRIEFING.55参照)。また、周囲に同じ高さの建物が今後出現しない環境の中にそびえるマンションもそうである。

土地の利用に関する新たな規制の多くは、既得権を認めざるを得ないため、それにより保護される物件は、規制により改善される地域の環境を享受しつつ、従来の機能を維持することができる。しかも、新たなライバルの出現もなく、希少性が高い。

なお、京都市の場合、同じ高さのものへの建て替えが不可であろうから、建物の老朽化とともに既得権の価値も縮小し、その価格は急落すると考えられることに注意しなければならない。


BRIEFING目次へ戻る