BRIEFING.136(2007.04.16)
建物賃貸サービスの原価(2)
前回は土地建物を所有する会社が行う建物賃貸サービスの原価について考えたが、今回は敷地が借地権である場合を考える。
そうすると原価には、維持管理修繕費、水道光熱水費、公租公課、損害保険料、減価償却費などに加え、地代が加わる。
そして、前回述べた「敷地提供費」は除かれることになる。また公租公課のうち土地に係るものも除かれることになる。
ところで、「敷地提供費」(=土地の時価×期待利回り)に土地に係る公租公課を加えれば、それは地代(積算賃料)そのものではないか。
つまり、土地が所有権であろうと借地権であろうと、建物賃貸サ−ビスの原価は同じということになる。建物賃貸サービスの需要者にしてみれば、敷地が所有地か借地かはどうでもよいことであるから、当然のことかも知れない。
それぞれの場合の家賃の内訳を整理すると下表の通りとなる。
家賃 | 維持管理修繕費 | 維持管理修繕費 | |
水道光熱水費 | 水道光熱水費 | ||
損害保険料 | 損害保険料 | ||
減価償却費 | 原価償却費 | ||
公租公課 |
建物 | 建物の公租公課 | |
土地 | 地代 |
||
敷地提供費 |
但し、新規の土地の賃貸借は定期借地権を除きほとんど見当たらないし、昔からの借地の継続地代は、借地借家法や裁判所の地代抑制主義により、いびつなものになっている。
また、敷地が所有権の場合の「敷地提供費」も、所有者等がそれを収益の中から分離して認識しているわけではなく、土地の時価が上がったからといって、また、市場の金利が上がったからといって、すぐに敷地所有者等がそれを家賃に転嫁してくるわけではない。
むしろ、賃貸市場の中で、転嫁が可能な場合には、転嫁することにより土地の時価の上昇を追認し、不可能な場合には、土地の時価の上昇を否定し、取引市場にその撤回を促すことになる。
継続地代の拘束性がなく、また、家賃と地価との微妙な関連性が瞬時に調整される、いわば理想の市場において、上表は成り立つだろう。